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2005/06/22

靖国参拝問題に一言

小泉首相の靖国神社への参拝が国内外で問題になっていますが、議論は藪の中の蛇のをつついているように思えまます。わざわざ問題を分けて議論しないで混乱させ、政府はどこか目的の地へ導こうとしているのではないかと疑いたくなります。次の四つに整理してその上で考えてはいかがでしょう。1.中国、韓国からの参拝への抗議、2.A級戦犯合祀、3.太平洋戦争は侵略戦争かか自衛の戦争か4.靖国神社建立の経緯。

まず1.中国、韓国からの抗議は政治的発言ですから、正しいとか正しくないと議論しても意味がありません。ここだけを捉えると「他国からの内政干渉だから独立国の日本は当然参拝するべき」となり、いつの間にか公式参拝そのものが正当化されていきます。そこでは「なんのために参拝するのか」という問題が消えてしまいます。
 2.のA級戦犯合祀では「A級戦犯が合祀されているから参拝すべきではない」という声には、東京裁判は勝者が敗者を裁いたもので、正当な裁判ではないとして、インドのパール判事のことを持ち出し、戦争犯罪はなかったといいます。この部分も「戦犯とは認めない」とは、裁いたアメリカに対していうべきことです。人類が農耕、牧畜を覚えて以来、国家間の領土は常に戦争の勝敗、国家の興亡によって動いて来たのですから国家間の戦いに犯罪は成り立ちません。だからといって戦争によって直接、間接的に亡くなった人々に対する罪は消えないと思います。広島、長崎の原爆、東京大空襲による一般市民の死者に対する責任はアメリカの責任にのみ着せられるものではありません。私の父も二度も赤紙一枚で召集され、一度目は傷痍兵士として帰国、二度目は終戦のたった一週間前に、満州という異郷の地で、乳飲み子の私を抱える母の前から引き立てて入営、そのまま酷寒のシベリアへ連れ去られていきました。器用だった父は大工仕事でノルマを達成、どうにか命は取り留めましたが、引き上げ船で帰国後は十分働くことも出来ないほど身体はぼろぼろになっていました。かろうじて帰国しても父の帰国を待たず死んだ母親、シベリアで死んだ人々、満州に日本国家から棄民され、日本までたどり着く事ができないで死んだ人々、一般国民の幾多の犠牲に対して誰も責任をとっていません。「東条英機はA級戦犯ではない」という言葉ですべての戦争責任を消し去ろうとしているようにもみえます。
 3。「侵略戦争か自衛の戦争か」という問いには米英に対しては確かに自衛という側面があったと思いますが、韓国や中国に対しては侵略であったことは間違いありません。明治維新に成功した日本は他のアジア諸国のように植民地にされないために必死に近代化を計りました。それが欧米化であり、その帰結として日露戦争に勝利(?)したのです。しかしその影にはアメリカの支援がありましたし、日露戦争の戦費は日本国債をイギリスが引き受けて調達したものです。日露戦争までの日本に指導者は極めて戦略的で自制心がありました。日露戦争もなんとか引き分けに持ち込みロシアの満州、朝鮮への侵略を食い止めることを終戦目的として戦っています。その後大国ロシアに勝ったと錯覚した政府は第一次世界大戦でヨーロッパ戦線の影で漁夫の利を占め、次第に中国大陸への野心を高め英、米との対立を深めていったのです。歴史にIFはありませんが、あの時自制して大東亜共栄圏など持ち出さないで、満州と朝鮮半島のみで押さえておけば、もしかしたら太平洋戦争は避けることができたかもしれません。中国、朝鮮の人々にとっては侵略であったことは間違いありません。遅れて植民地戦争にのめり込んだ分、批判の矢面に立たされるもやむをえないことです。しかしあの時大陸へ出て行かなければ、今日の日本はなかったでしょうから、日本人全体としては、アジア諸国を犠牲にして今日の日本があることを自覚して、アジア諸国に丁重に詫びて償いをすることを忘れないようにしたいものです。
 4.靖国神社建立の経緯については、円空の彫像にも書きましたが、靖国神社は明治政府が天皇を中心とした国家神道で、祭政一致の中央集権国家をつくるためのシンボルであり、古来からの日本神道と同列に扱うことはできません。本来日本の首相が公式参拝するところではないはずです。あえて強行して内外に問題を起こして国論をどこかへ引きずっていくつもりなのでしょうか。この問題は元々小泉首相は公約で掲げてわざわざやぶ蛇にしたわけですからきっと確信犯なのでしょう。それにしても、もつれてしまって解きほぐせない難しい問題です。

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コメント

小泉さんにしたらすべては、政治の道具にすぎなかったということでしょうか?もしそうなら、ふざけていますよね。自分の政策をスムーズに運ぶために平和へ進んでいる近隣国との関係をわざと崩す行為はいかがなものか?と思いますね。どの組織もでしょうが、トップの一挙手一踏足が想像以上の影響がありますよね。

投稿: 雑草 | 2005/06/23 07:58

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 中国での反日運動が報道されるにつれて、靖国神社やA級戦犯、さらには東京裁判につ [続きを読む]

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