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2006/03/06

輸出至上主義を捨てる

對馬省次さんからコメントをいただきました。
 「私も含めて域外を相手にビジネスをしている」事業者は元気ですが、地場の消費者を相手に事業を営んでいる人たちにはここ二、三年だけでも自殺者が二桁、廃業も二桁、人口3万8千人の町で日常的に起こっています。」
 對馬省次さんコメントありがとうございました。對馬省次さんの郷土愛、自分だけではどうにもならない歯軋りが聞こえてきます。僕も日々「ごまめの歯軋り」同じ想いです。黒石で起きていることは、日本中いたる所で起きている「中央と地方」の関係を象徴しています。範囲を世界に広げると「アメリカと日本」の関係も同じです。

日本企業で輸出で稼いでいる個別の企業は潤っていますが、日本全体はそのおこぼれに与ることはなく、むしろ輸出で外貨を稼げば稼ぐほど、輸出に関係していない企業、人々は疲弊していきます。輸出企業の社員ですら仕事は確保されているものの、今春の賃上げでは幾分おこぼれが回ってきそうですが、給与も十分上がらずその稼ぎの恩恵を満喫できていません。
 日本人が輸出で潤ったのは1960年代までです。ニクソンショックで気づかなければいけなかったのです。せめてプラザ合意で気づいて欲しかったのです。ニクソンショックでドルと金のリンクを切断したアメリカは自国の貿易赤字の心配をする必要はなくなったのです。アメリカは単なる紙切れを印刷すれば世界中のモノというものを自由に買うことができます。日本は輸出で溜まったドルをアメリカ国債に換えてしまいます。折角日本人が働いて得た貯蓄をまとめてアメリカにあげてしまうのです。その上円高のたびに目減りして、一ドル360円のころの貸付はもう1/3です。輸出で稼いだドルは日本人の汗と知恵が形になったものです。結局ただ働きをしていることと同じです。日本国内のストロー効果の行く先は終着アメリカまで吸い上げられていきます。
 僕はプラザ合意の頃から輸出税論者です。アメリカに課徴金で脅かされるくらいなら、輸出企業に輸出税をかけて、それを内需拡大に使ったらいいのです。円高恐怖症でドルを買い支えている資金は結局税金ですから、輸出企業に輸出奨励金を払っているようなものです。日本から輸出することは、輸出先の国の庶民の職を奪っているのです。輸出課徴金で苦しくなったら海外で現地化すれば、現地の庶民に職を作り出すことができます。輸出万能主義は戦争に敗れた日本人が、未だに帝国主義の幻想から抜けられなくて、勝ったアメリカ人は、一段と利口になって人類史上初、純紙切れを基軸通貨にするという錬金術を発明したのです。
 来年になるとM&Aもアメリカ企業も自社の株を原資にして、日本の企業を買収することが出来るようになります。アメリカ企業の株価を支えているのも、日本が保有する米国債が原資です。輸出課徴金というと荒唐無稽の話に聞こえますが、貿易収支の黒字分のドルを売って円に換えればいいのです。そうすればその円は国内に出回り。一方円高になって耐えられない企業は海外へ出て現地化していきます。そして円安に戻ってくれば、農業も日本人ができるようになります。結果は同じです。それができない日本はアメリカの植民地、日本人は奴隷にすぎません。ただ目に見える暴力を使わず、極めて婉曲的、ソフトなのでいわゆるゆでガエルにされているだけなのです。1994年のメキシコ危機、それに続くアジア通貨危機、1998年のロシア、ブラジル通貨危機、その都度各国では超インフレが起こりその被害を蒙ったのは各国の庶民のなけなしの預貯金、老後の生活資金、そして失業です。
 長年少数派であまり相手にされなくて、寂しい思いをしてきた「輸出至上主義を排す」を解き明かす本がでました。この一冊で、ひざを打って納得できると思います。「マネーを生み出す怪物」とあわせて読むとさらに納得がいって、個人としてせめて幾ばくか難を逃れる術も浮かぶかもしれません。

タイトル  黒字亡国論-対米黒字が日本経済を殺す-
著者    三国陽夫
出版社  文春新書

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コメント

> 日本が世界に誇れる理想の社会は壊れてしまいました。
> また身近に出会った人々、なんとか守りたいですね
> 片手に一人くらいは出来るはずですから、知恵を働かせて!

メールを頂きありがとうございました。
早速、本「黒字亡国」文春新書を入手し読み始めました。
まだ出だしの所ですが、読み始めたら引き込まれて止まらなくなりました。
読み終わったころにまたコメントを出します。

投稿: 對馬省次 | 2006/03/10 17:42

さっそく本を買い求めて勉強します。
でも、虚しさだけが残るのかもしれませんが。

投稿: 對馬省次 | 2006/03/07 18:44

円が高くなればなるほどアメリカへの貸付が少なくなっているんですね。知識は与えられるものだけでは真実は見えてこないんですね

投稿: 雑草お | 2006/03/07 09:07

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