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2006/06/12

東アルプスを歩く(4)口コミの極意

東アルプスの中心に日本百名山の一つ甲武信岳2、475㍍があります。名前の通り信州、甲州、武州の境の山です。この頂上直下15分のところに甲武信小屋があります。小屋の外観は、昔の山小屋の趣が残っていて、「登ってきた!」という充実感があります。
 

 小屋の外観は古い山小屋ですが、中はとてもハイテクになっています。山小屋の主人といえば大方ハイテク嫌いが多いのですが、ここのご主人山中徳治さんはハイテクが大好きのようです。六年前家内と登ったときは、ソニーのバイオとプロジェクターで100インチの画面にご自身で撮影した四季の甲武信岳の写真を投影してみせてくれました。
 今回食堂には、なんと42インチの薄型大画面テレビが据え付けてありました。もちろん不粋にテレビ番組を見るわけではありません。ご自身がハイビジョンカメラで撮影した甲武信岳周辺の四季折々の花々、残雪の中の小屋開きの様子を見せてもらいました。この山に三度登りましたが、石楠花以外にあまり花を見たことがなく、原生林の風倒木と苔の緑に包まれた山という印象でした。まだ見ていない美しい花々をハイビジョン映像でみると「よし今度は十文字峠から登ってみよう」という気になります。
 テレビのスイッチを切ったご主人は、テレビの後ろからDVDを宿泊客に一枚ずつ分けてくれました。「宣伝には口コミが一番」といいますが、具体的に口コミのため方策を実行している会社は少ないのですが、このDVDはこの山域の美しさを伝える強力な口コミツールになります。このDVDを持ち帰ったひとは必ずや、周囲の山仲間を集めて得意げに見せるに違いありません。見た人たちはもともと山好きですから、登りたい衝動に駆られ、きっとその場で、「いつ登ろうか」と登る相談を始めることでしょう。
 さらにこのご主人の一言が続きます。「手ぬぐいを配ったって150円くらいかかるんだ。これなら100円もかからない」「撮影から、編集、ダビングすべて自分でやるからさ」これにはびっくりしました。僕が日ごろ研修でお話している、変動費(vPQ)と固定費(F)の意味をしっかり捉えているのです。変動費(vPQ)は全額出費になります。DVDを製作する時間は固定費(F)です。固定費(F)は仕事をしてもしなくても、時間の経過と共に失われていくコストですから、空いた時間の固定費(F)は埋没原価です。その時間で製作すれば製作コストはゼロです。
 コストだけで捉えても、手拭を配るよりDVDのほうが安いのです。その上DVDには撮影からダビングまで、山小屋のご主人の想いが込められています。顧客満足は比較になりません。手拭では山仲間集めて語ることはありませんが、DVDを見ながらの山行の話は熱のこもったものになるに違いありません。

<甲武信小屋のHP>
http://www.kobusi.com/

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コメント

人間は「自分の都合」で考える動物ですから、どうしても「give」は大きく評価してしまい、「take」は小さく見てしまいます。自分もそういう動物の仲間と自覚することが大事ですね。
「give」できたことを喜べればいいのでしょうが、中々できない自分がいます。せめて「take」は冥土へいくまで仏様にお預かりいただくことにします。

投稿: 懐中電灯 | 2006/06/12 12:29

100円のDVD、変動費と固定費、実に痛快な話です。心から喝采を贈ります。

よくgive&takeと言います。こう言う時、人は目先のtakeばかり考えている。衣の下は鎧の重装備。そうするとtakeは僅かになる事が多い様に思います。真に賢い人はgive&give。takeを考えずにひたすらgiveに徹する。そうすると大きなtakeが得られる。仮に具体的なtakeが得られなくても、giveに徹する事が出来た、喜捨が実践できたと満足感を得られる。give&give、無欲の大欲と訳したい。

山小屋のご主人はgive&giveの実践者であったと解しております。


投稿: 雲水 | 2006/06/12 10:17

凄い販売ツールですね。山中さんも甲武信岳がとても好きなんだろうなと想像します。

投稿: 雑草 | 2006/06/12 07:46

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