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2006/08/28

フラット化する世界(2)

 もし著者から自分に「世界はフラットを感じた出来事は?」と問いかけられたとしたら、きっと「2002年に家内とアンコールワットを観光した時の光景です」と答えたでしょう。同じホテルに五日間滞在してアンコールワット周辺をじっくり見て回ったので、遺跡だけではなく、町の様子もじっくり見ることができました。国民の1/3を虐殺したといわれるポルポト政権が倒れ、政権が安定して9年ほど経ち、ようやくアンコールワットの観光開発が始まったころでした。遺跡を回ると子供達が、土産物を持って観光客の周りに寄ってきます。日本人と分かっていても「百円」「百円」とはいいません。「ワンダラー」「ワンダラー」といいます。遺跡の中の、登りの急な階段の前で、熱心に緩やかな階段のあるところを教えてくれます。英語が苦手な僕も片言の英語で「ドルを手にしたら何をしたいのか?」と聞くと「英語を習う」といいます。町の中にも私設の英会話教室、日本語教室があります。インターネットカフェもありました。英会話を覚えると、町のみやげ物やで働けるのだそうです。ただ生活のために観光客にたかっているという光景ではなくて、明るい上昇志向を感じて、若い頃の日本の若者の上昇志向と重なるものを感じました。 

 片言で子供と話しながら、もしかすると21世紀のある日、奈良、京都のお寺の前で「ワンダラー」「ワンダラー」と日本の貧しい子供達が、中国人はじめアジア人観光客に声をかけている光景を想像してしまいました。同じ頃敦煌の遺跡でも、砂漠の中を光ケーブルを埋設する労働者を乗せたトラックがシルクロードを疾駆していましたし、敦煌の遺跡の観光でもすでに携帯電話も珍しくありませんでした。砂漠のオアシスも光化学スモッグで目が痛んだほどです。「フラット化する世界」を読みながら、あの光景こそ「世界はフラットだ!」と思い出したのです。
 21世紀に始まる、グローバリゼーション3.0は個人がその能力を世界レベルで比較されて、より能力の高い個人に仕事が移行していく時代、個人のフラット化が始まっています。著者は求められる個人の能力はIQ(知能指数)もさることながらCQ(好奇心指数)PQ(情熱指数)がより重要だといっています。教育制度もこれまでの産業社会に適合する人づくりから、変えていく必要があります。個人の能力が世界中で比較され、収入と直結していくので、個人間格差が拡大していく時代なのです。
 グローバリズムはアメリカが押しすすめている覇権主義と考えがちです。軍事力を背景に唯一純紙切れのドル紙幣を、刷りまくってばら撒く資本のフラット化、という視点からみればそのとおりですが、それがすべてではないことをこの「フラット化する世界」は語っています。それはアフリカに誕生した人類の祖先が、地球の隅々まで気の遠くなる長年月、休むことなく広がってきた大きな流れが、今加速化していると著者は語っています。
 この加速化する流れは、けっして強者のためだけの流れではなく、弱者とっても、知恵を出し、汗を掻くことで大きな機会をつかむことが出できます。しかし人間社会は放置すれば、必ずや過去の蓄積が不平等、不公平、不公正を拡大していく社会でもあります。その三つの「不」を縮める知恵もまた今求められていると思います。
 この変化を著者はグローバリズム3.0と名づけていますが、その変化を単純に礼賛したり、毛嫌いしたりしないで冷静に対応するために、じっくり「フラット化する世界」を読んでみてはいかがでしょう。

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コメント

まだ読んでいない私には、読むときのポイントが示唆されてあったので参考になりました。明日にでも購入します。

投稿: 雑草 | 2006/08/28 18:06

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