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2006/11/04

アメリカのドルと北朝鮮のドル

 北朝鮮が紙切れにアメリカドルに似せて印刷して輸出していることはご存知ですね。アメリカ自身も紙切れに印刷してドル紙幣として輸出しています。誰もが北朝鮮のドルが偽ドルであると信じています。アメリカも紙切れに印刷してアメリカドル(以後米ドル)としただけですから、その違いはどこにあるのでしょうか。仮に北朝鮮のドル(以後北ドル)と米ドルの印刷コストが同じだとして、北ドル一ドルから印刷コストを差し引いた差額は金正日の懐にはいることは誰にでもわかります。それでは米ドル一ドルの差額は誰の懐にはいるのでしょうか。とりあえずアメリカという国に入ることはわかります。

 しかし普通のひとが普通に使うには何の支障もないほど精巧に作られています。日本人が偶然手持ちの円と両替したドルが北ドルだったとしたら、そして知らずに使ったとしたら果たしてどちらが本物でしょうか?使えさえすれば、右から左に渡してしまえば、本物も偽者も関係ないことです。どうせ差額は日本人の懐には入らないのですから。
 それにしても北朝鮮もアメリカも紙切れを印刷してドル紙幣にすれば、なんでも買えるのです。北ドルは一度に大量に使えば、ばれるので大量には使えませんが。米ドルなら日本の銀行だろうが、保険会社だろうが、世界中のものや企業が買えてしまうのです。
 1971年8月15日アメリカのニクソン大統領は、それまで米ドル35ドルと金一オンス(現在600米ドル)を交換していたものを、一方的に交換停止を宣言しました。後にニクソンショックと言われるようになる政策です。日本経済は大混乱しました。8月15日に宣言したことでも日本を狙った政策であることは明らかです。日本の第二の敗戦です。以来米ドルは純粋紙切れになったのです。紙切れさえ印刷すれば世界中のもの、会社も買うことができます。以来膨大な財政赤字と貿易赤字、いわゆる双子の赤字を続けながら、今日まで「いつ崩壊するか」周囲をはらはらさせながら、いつの間にか膨大な冨を積み上げてしまったのです。
 「乱読のすすめ」に紹介した岩井克人著「ヴェニスの商人の資本論」を読むと貨幣とはもともとそういうものだと書いてあります。貨幣を発行したときすでに「隠された一方的贈与」が行われているというのです。仮にアメリカ(FRB)が100万米ドルを印刷した、その途端に世界中の誰かがアメリカに100万ドル分の資産を贈与しているのです。これならアメリカが破産するはずはありませんね。ババ抜きのババと米ドルは似たようなもので、今この瞬間に米ドルを持っているひとがババを持っていることになります。 とすると円だろうとユーロだろうと江戸時代の小判だろうと通貨はすべて同じ原理です。ただ近代国家の通貨はコストを下げるために、素材を純粋紙切れを使っているのです。ちなみに一万円札のコストは20円程度です。日銀がが一万円を印刷した瞬間に国民は9880円を贈与したことになります。
 おおよそわかっていたつもりでしたが、どこかにまさかまだ知識不足ではないかと思う部分がありました。浅はかだったことが「国民から中央銀行へ(そして国家へ)の一方的贈与が隠されている」という「ヴェニスの・・・・」の一文で明らかです。そしてグローバル化の推進で一国家を超えて、世界中の人々が米ドルを受け取るということで、アメリカに贈与していることになります。日本はすでに相当額を贈与してしまいましたが、中国も大分贈与していますがまだまだこれからです。そしてインドも。
 米ドル紙幣には「IN-GOD-WE-TRUST」と印刷されていることを忘れることはできません。印刷したのは誰?GOD、それとも?

 
 

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コメント

本日、懐中電灯さんの文章を投稿させて頂きました。
ありがとうございました!

http://soubakabuo.cocolog-tcom.com/blog/2006/11/post_8892.html

それから偶然ですが、ちょうど自分も先日「机上の空論」という記事で、お金の価値について書いたところでしたので驚きました。懐中電灯さんみたいなブローバルな書き方ではないですが、よろしければ読んでみて下さい。

http://soubakabuo.cocolog-tcom.com/blog/2006/11/post_8bf3.html

投稿: 相場株男 | 2006/11/09 00:25

コメントありがとうございます
<yumenosimaさん>
余剰生産物を交換するメディアであった通貨が冨の蓄積になると、戦争が始まりますね。強奪するほうが手っ取り早いし、死ぬのは庶民ですからね。yumenosimaさんのおっしゃるように「自分で作る」ことを忘れないようにしなければいけませんね。
 貨幣の持ち方、使い方がむずかしいので、むしろ持つと難しさを不幸と感じるのではないでしょうか
<うるしさん>
この稿を書いたのは、最後のなぞが解けたからです。アメリカはすでの信用を失っていると思いますが、困らないのではないかと、最後の確信に至ったからです。米ドルという紙切れを最後に持った者が困るだけだです。だから「永遠を願い」果てしないババ抜きを続けているのではないでしょうか?それがまたアメリカの思う壺。ただFRBは政府がコントロールできない機関ですから、アメリカという実態もないということが恐ろしいです。恐慌がババ抜きを中断させるのかもしれません。

投稿: 懐中電灯 | 2006/11/08 08:59

名かなか面白い視点でした。紙幣についてはずいぶん考えたことがありますが、結論は物々交換の代替品であるというのが目下の私の考えです。ですからまさにTRUST(信頼)だけが頼りの世界です。アメリカの信用が失墜すれば、モトの物々交換の時代に戻るのでしょう。しかしその代替品がこれだけ世の中を撹乱もするということは恐ろしいことだと思います。

投稿: 漆山 治 | 2006/11/05 14:04

―自分のものは自分で作ることを忘れると貨幣の奴隷になる―と言うガンジーの言葉を思い出します。
まさに人々は貨幣の奴隷になってしまいました。
手作り、もの作りの原点を思い起こすことは自立を取り戻すことにつながっていると信じています。
面白いことに
現状に不満がある人の割合は、収入が多い人の方が高いのは貨幣では幸せを買えないことを物語っていますね。

投稿: yumenosima | 2006/11/05 08:17

コメントありがとう
<アントニオさん>
さらに来年は株式交換でM&Aが出来ることになりますから、アメリカの企業が自社の株式と交換で日本の企業を買収できるようになります。株券だって紙切れ、株価を吊り上げておいて、交換すればいいんですからね。
<雑草さん>
経済学の論文としてはとてもたとえ話が面白く読める本です。
「ヴェニスの・・・」を手にした縁はアントニオさんなんです。アントニオさんのハンドルネームはどこから来たのかずっと考えていて、もしかしたらヴェニスの商人から取ったのかと思っていたところに、この本のタイトルが眼に入ったのです。縁とは面白いものですね。

投稿: 懐中電灯 | 2006/11/04 21:29

ヴェニスの商人の資本論読んでみます。

投稿: 雑草 | 2006/11/04 19:15

貨幣とは、隠された一方的贈与である。なるほど、貨幣に対するそのような見方があるわけですね。新たな視点です。
アメリカはそんな原理を掴んでいたいうわけですか?
したたかな国ですね。

投稿: アントニオ | 2006/11/04 11:22

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