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2006/12/23

映画「硫黄島からの手紙」を観て(2)弱者にとっての家族

 クリントイーストウッドがスクリーンを黒を基調に抑えて、坦々と「父親達の星条旗」そして「硫黄島からの手紙」日米双方の視点で映画を撮るという快挙を成し遂げてくれました。現在の日本人とアメリカ人がニ作品を観てどんな感想を持つか楽しみです。
 栗林忠道中将は、司令官としての務めは選ばれた者、強者の矜持で、圧倒的な重装備のアメリカ軍にも7,000名を超える戦死者、戦傷者30,000人の犠牲を強いて、自らの命と共に21,000名の命を、本土のために生贄に捧げて、三十六日間硫黄島を延命しました。

 しかしその目線は国家ではなく家族です。弱者の目線です。弱者にとっては家族が一番大事なのです。21,000名はその目線に共感し、命を捧げたのだと思います。
 中村獅童演ずる中尉は抜刀して、「陣地を失ってなぜ生きているのか、死ね!」と絶叫しますが、結局己自身は死ぬことも出来ず、捕虜となって負け組の哀れを味わうことになります。
 ジャニーズの二宮和也演ずる召集兵西郷は、大宮に妻と出征中に誕生して顔を見たこともない娘を残したパン屋でした。なぜ弱者の一庶民が戦争に駆り出され、なぜ死ななければならないのか。家族でたった一人の稼ぎ手が死んでしまったら、残された家族はどうやって生きていけばいいというのだろうか。戦勝国でも戦敗国でも、その戦後をよくよく見れば、戦争の被害は弱者にのみ、及んでいきます。
 しかしそれでも死ぬのは、国家を守るため、そんな大義ではなく、家族を守るためです。家族が住む国土だから結果として国土を守ることになります。クリントイーストウッドの目線も、栗林忠道の目線も国家という抽象概念ではなく、弱者としての個人、そしてその個人にとってもっとも大切なものは家族、個人にとっては家族が最後まで守るものであり、家族が自分を守る最後の砦でもあることを、あらためて認識させてくれる映画です。

 今山田昌弘著「新平等社会を読んでいますが、その45ページの一文に赤線を引きました。日本人の中年男性の経済的理由による自殺が多くなっていることに触れています。
 「なぜ日本人が経済的理由で自殺するのか」
 「日本人は『拝金主義だ』と短絡してはいけないという話です。
 日本では自殺でも生命保険が出ますが、ヨーロッパでは自殺では出ないのだそうです。家族の稼ぎ手である夫が経済的に破綻すると、残された家族の生活は途端に困窮してしまいます。その家族のせめて中流の、生活を守るために、己の命と引き換えに、保険金を残すという選択をするというのです。
 保険金が出ないヨーロッパでは、稼ぎ手が死んでしまっては、残された家族はもっと困窮するのです。単に日本人の男が、気が弱かったり、一時的な迷いで自殺をするのではなさそうです。中高年男性の経済的理由による、自殺のすべてとはいえませんが、多くは硫黄島で家族のために命を捧げたと同じ心境の、悲壮な戦死なのかもしれません。違うのは自らが孤島に追い込んで、閉じこもった結果だということでしょう。
 日々の経済戦争の渦中にいたら「所詮俺は弱者なのだ!」叫んで、SOSを発信する弱者の勇気も必要ではないでしょうか?
 

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コメント

コメントありがとうございます
<会長さん>
 自立化塾の冒頭でもお話しましたが、企業の大小にかかわらず、後継者の星の下に生まれたら、エリート(強者)なのです。弱いものを守っていってください。社員もその家族も、そのために不動明王になるのだと思ってくださいね。
<大森の沢庵さん>
沢庵さんのブログ拝見しています。是非知識と経験を多くの方に発信してください。コメントを戴いたり、返事を書いたりしているうちに、自分でも、気付いていない自分に気付いたり、コミュニケーションの力に感謝しています。
 日経のSNSに参加しませんか?まだ会員数は少ないですが、ミクシィのものをコピーして、双方に発信するといいと思います。
 マイミクのエコふとんさんを訪ねて見てください。 

投稿: 懐中電灯 | 2006/12/25 09:17

懐中電灯さん、大変ご無沙汰しています。
「硫黄島からの手紙」は私も見ました。  これまでマイナーであった、硫黄島の戦禍を家族との手紙のやり取りと、その手紙を届ける困難さ!
 日米双方の視点からみた内容など斬新な映画ですね。
懐中電灯さんのいわれることには、色々教えられることが多く大変参考になりました。
 尚、小生も最近は日記の作成「mixi」に励んでいます。

投稿: 大森の沢庵 | 2006/12/25 01:10

 懐中電灯さん、大変ご無沙汰しています。
「硫黄島からの手紙」は私も見ました。  これまでマイナーであった、硫黄島の戦禍を家族との手紙のやり取りと、その手紙を届ける困難さ!
 日米双方の視点からみた内容など斬新な映画ですね。
懐中電灯さんのいわれることには、色々教えられることが多く大変参考になりました。
 尚、小生も最近は日記の作成「mixi」に励んでいます。

投稿: 大森の沢庵 | 2006/12/25 01:08

懐中電灯さんの日記を読む度に自分の考えの浅さを
思い知らされます。。
「愛国心の種子は家族」と言う言葉をみてなるほどな!と思いました
自分も弱者の上立つものとして家族のため、社員のため、
懐中電灯さんの言葉を忘れずに頑張ります。。

投稿: 会長 | 2006/12/24 23:21

コメントありがとうございます
<雑草さん>
結婚することで守るものができるんです。仕事のやり方もきっと変わるのではないでしょうか。そして中小企業では会社を守るのは社長一人です。
<三代目さん>
ご両親からいい教育を受けてきましたね。家族の生活を落とすことができないと思ってしまうのでしょう。男は家庭内で仕事の話をしないとか、愚痴を言わないという戦士も多いのですが、僕は反対です。話して状況を理解してもらうことが情報の共有です。それではじめて家族が砦になります。
<アントニオさん>
 悲しいですね。しかし厳しいようですが自殺したら「負け組」です。残された家族だって、家族の命と引き換えにした生活が感謝こそすれ、幸せなはずはありません。残された家族も一緒に「負け組」になってしまいます。
 僕がことさら、弱者と「負け組」の違いを強調するのは、個人は紙一重で誰でも「敗け組」になる可能性を持っているからです。そう思えば、弱いものいじめもほどほどになります。
 村上、堀江ともに結局誰かに使われて「負け組」に落ちてしまいました。家賃をケチった本間教授も勝ち組から一気に地獄です。天国、地獄は来世にあるのではなく、今生の生き方の中にあると思えるか思えないか。
 

投稿: 懐中電灯 | 2006/12/24 01:43

中年男性の自殺ですが、ヨーロッバと比べると日本の方が多いのでしょうか?僕は保険がでないので欧米の方が少ないともいえないと推測しますが、
統計的に見てどうなのでしょうか?

自殺で保険が出ないヨーロッバでは、たかだかマネーで破産しても生き残れる道が、思想的にもシステム的にも用意されているのではないでしょうか?

投稿: アントニオ | 2006/12/23 21:14

「死ななくても方法があるはず」と、私は言うことが出来ません。
家族と会社を救うために逝った人も知っています。

欧米は自殺に保険は降りないと聞き、日本の自殺率の高さに納得です。年間3万数千の自殺者の内4分の3が男性です。家族を守るために命を懸けて競争社会に抵抗して逝ったのです。

そう考えると、
栗林中将の思いとそんなに変わらないのかも知れませんね。

愛するもののために死することは崇高なことだと思います。しかしそのような状態に追い込んだ者が生き延びていく社会は悲しいことです。

投稿: yumenosima | 2006/12/23 20:39

 現代での「家族を守るための死」は、保険金目当ての自殺。淋しいことです。
 中高年の自殺の話題を聞くたびに、他に道は無いものか?と考えてしまいます。
 亡父母に「自殺は地獄行き」「自らを殺人することは一番悪」と教え育てられた私には、そう考えざるを得ません。
 しかし、渦中にいると「自らの命と引き換えに保険金を家族に残す」と言うことしか考えられなくなってしまうのでしょうね。生きていても地獄、死んでからも地獄。
 何とかならないものなのでしょうか?

投稿: 三代目 | 2006/12/23 13:21

まだ家族を守るという立場を自覚できてませんが、今からの行動基準になるお話です。
そうですよね。
状況は色々あると思いますが、死んでしまってはいけませんよね。

投稿: 雑草 | 2006/12/23 11:25

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