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2007/05/31

岩井克人著「貨幣論」を読む(5)「ヨーロッパの自立」

<ユーロの誕生は米ドルからのヨーロッパの自立>
 第二次世界大戦が終わった翌年の1946年、偉大なる政治家イギリスの首相ウィンストン・チャーチルはスイスのチューリッヒでの演説で「我々は一種の『ヨーロッパ合衆国』といったものを築かなければならない。・・・・」と語っていました。
 第一次、第二次と二度にわたる世界大戦で主戦場となったヨーロッパはすっかり疲弊しきって、ヨーロッパの人々は戦争の悲惨さを十二分に味わったばかりでした。しかし戦後の復興が始まると、まず必要になるのが鉄鋼です。となるとドイツの鉄鋼産業の力が不可欠になってきます。石炭を売りたいベルギーとフランスも二度にわたるドイツの侵略に懲りて、警戒心を解くことはできませんでした。
 そこで1951年フランス、ドイツ、イタリア、ベルギー、オランダ、ルクセンブルグの6ケ国で、石炭と鉄鋼産業を共同管理する、ヨーロッパ石炭・鉄鋼共同体(ECSC)を設立しました。

 このECSCを契機として、ヨーロッパは統合へと向かい、
1958年欧州経済共同体(EEC)へ、
1967年ヨーロッパ共同市場(EC)へと
発展していきます。当初様子を見ていたイギリスも1973年(ニクソンショックの年)にはECに加盟することになります。僕の学生時代はECへと統合されていく真っ只中、「EC」という言葉が出るたびに、日経新聞を切り抜いていた自分を思いだします。
 さらに1989年11月ベルリンの壁の崩壊、1991年12月ソ連邦解体とヨーロッパ激変の1993年には欧州共同体(EU)へと発展していきました。
 1999年欧州共同体は、共同体共通の通貨として「ユーロ(EUR)」を使うことに踏み切ります。まさか国家の枢要な権力の一つである通貨発行権を手放すとは、世界はかなり懐疑的、これを機にEUも弱体化するのではないかと考えていた人も多かったのです。
 しかし2002年にはユーロの紙幣、硬貨が発行され、混乱もなく各国に浸透していきました。2007年EU加盟国は27ヶ国人口5億人、ユーロ採用国は13ヶ国を数えるまでになり、周辺ユーロ圏人口は8億人を数えるまでになりました。
 ヨーロッパは、自国の通貨を捨てて、共通単一通貨ユーロを持つことで、1946年荒廃した瓦礫の中でチャーチルが掲げた「ヨーロッパ合衆国」が現実のものとして誕生し、通貨ユーロによって米ドルからの自立を果たすことができました。
 石油取引はいまでもすべて米ドルで行われていますが、イラク戦争の一因には、フセインが石油の取引にユーロを使うことを企てたことがあるといわれています。中国、ロシアなど急速に外貨準備を積み上げつつある新興国家は、日本の轍を踏まないように、外貨準備の一部を米・ドルからユーロへ移しつつあります。いよいよユーロは第二の基軸通貨の役割を担っていくことになるでしょう。
 1999年一ユーロは1.15米ドル、132円でスタートしました。2000年には一時対米ドルでは最安値0.85米ドル(26%下落)まで、対円では93円(30%下落)まで下落しました。しかし直近では、1.35米ドル(17%上昇)、164円(17%)まで上昇しています。ユーロ圏の拡大を考慮に入れると、上下の振幅はあるものの、米ドルと円に対するユーロは次第に強くなっていくに違いありません。
 日本が相変わらず輸出にこだわり、貿易黒字を対米ドル債権のみで積み上げている現状から、未来を想像すると日本人の円資産は限りなくアメリカに吸収されていくことになるのではないでしょうか。 
 グローバル化、フラット化が止まらない21世紀の世界の潮流だとすれば、個々の日本人が己の生き方、資産の持ち方も、グローバル化、フラット化に対応する思考に変えていくことが必要です。それが第五のKからの自立ではないかと思っています。
  http://net-ksk.cocolog-nifty.com/keiei/2007/01/post_7ad0.html



 
 

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コメント

コメントありがとうございます
<yumenosimaさん>
 第六回を書いています。大きな流れを無視したり、逆らうことはできません。しっかり激流を見つめながら、淀みを探して、したたかに生き抜いていくことを若者に伝えなければいけませんね。老中の役目です。

投稿: 懐中電灯→yumenosimaさん | 2007/06/01 21:33

5回の連載を拝見して、グローバル化の企みに踊らされて、すっかり魂い抜かれてしまったこの国の人々の姿がよく見えます。
この文に同感しただけで終わってしまっては何にも残りません。
グローバルの大河に石一つ投げ込むことを続けています。

投稿: yumenosima | 2007/06/01 15:43

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