« 複式簿記に秘められた色即是空(4)試算表からB/S,P/Lへ | トップページ | 複式簿記に秘められた色即是空(6)4K+1Kの連鎖の中に »

2007/10/24

複式簿記に秘められた色即是空(5)貸借対照表と義務と権利

<図.5貸借対照表と義務と権利>
Photo_2  5.貸借対照表と義務と権利
 (1)義務と権利
 
持ちこたえた会社も個人もⅠ.次元に大きな借入金を抱えてしまいました。「図5.資金の循環と義務と権利」をみてください。Ⅱ.次元の貸借対照表の資産は、権利(眼に見える)を表示してあります。そしてⅠ.次元には義務(眼に見えない)が表示されているのです。眼に見える権利は目減りしますが、眼に見えない義務は目減りしないのです。
 
ところが人間という動物は、眼に見える権利は実体以上に肥大化し、眼に見えない義務は矮小化してしまいがちです。それが人間の性であり、人間の醜悪性はこの権利の肥大化、義務の矮小化に起因するものが多のです。貸借対照表を読むときは、眼に見える資産は厳格に査定し、実際の数字より小さめに、眼に見えない負債、資本は実際の数字より大きめに判断する必要があります。

外からおカネを取り入れるときに、金額だけでなくその源泉(金融機関、株主、仕入先等々)も含めて、「何のために」取り入れるのかを、慎重に経営理念に照らして問わなければいけない。おカネという「権利を調達」するところにばかり、関心がいってしまいがちですが、それ以上に外部に対して「義務を負う」という深い自覚が必要なのです。いかなる場面でも「義務が先、権利が後」それが結果として、自分を守ることになります。

(2)資産の変態を記録する複式簿記

あらためて「図2-2.試算表」を見てください。実体のあるものは、Ⅱ.次元の資産だけで、Ⅰ.次元の資本も、Ⅲ.次元の費用も、Ⅳ.次元の収益もすべて、実体のない概念上の存在です。資産という実体の変態を、記録するためにつくったものです。「図2-1.仕訳の二重記帳」の(1)(3)(4)にみられるように、資産の変態を一対にすることで変態の行く末をとらえたものです。

会社という存在は、図2-1.(1)の活動で実体のない資本という「義務」を負うことで、Ⅱ.次元のおカネを調達します。(2)の投資活動で、そのおカネを変態させます。変態させる活動を通して、会社の存在のエネルギーとして、資産を費消します。その資産を費消したものがⅢ.次元の「費用」です。「費用」とは「権利の消滅」であり、Ⅰ.次元の「義務の証し」なのです。そして、会社の存在を証明するものが、Ⅳ.次元の「収益」です。図2-1.の(4)の活動です。お客様から商品と引き換えに、いただいたおカネの対として存在する実体のないものです。これは、権利が実現したものです。

Ⅲ.次元を一次元で負った義務の証しと、とらえると会計的には費用ではありませんが、国に納める税金、株主への配当、役員賞与もこのⅢ.次元でとらえることになります。Ⅱ.次元のおカネが、利潤の分配としてこのⅢ.次元で消滅していくのです。

(3)利潤が費用と同じⅢ.次元の存在である理由

前回上半分、下半分それぞれ、左右をあわせるために、Ⅰ.次元、Ⅲ.次元に「利潤」という概念を導入しました。これは左右のつじつまあわせではなく、「利潤とは未来費用」なのです。

P・F・ドラッカーは名著「現代の経営」の中で、「未来について確かなことは、未来が不確かだということだ」と書いています。事業経営はその、その不確かな未来にむかって意思決定をしています。又「事業活動は、自分の座っている椅子の足を絶えず、のこぎりで挽いているようなものだ」とも書いています。その不確かな未来への意思決定に内在するリスクを補填するものは過去の利潤です。「第一に目指すことは自己の危険を補償するにたる利益」したがって現在の利潤は「未来の費用」なのです。税金についても「企業はまた教育費や防衛費のごとき社会費用にも寄与しなければならない。このことは、税金を納めうるだけの利益をあげなければならない」と書いています。

さらに「しかも事業は、ただ自己の危険だけに備えればそれでよいというものではない。ときには、経営を誤った他の企業が出す損失の穴埋めをしなければならない事態も起こってくる。というのは、社会が自由で開放的で融通性のある経済を維持してゆくためには、経済的な新陳代謝が絶えず行われ、つねにいくつかの企業が損失を出し、消滅していかないからである。」と、失敗した企業の社会的費用も稼ぐ義務があると書いています。これこそ強いものの義務、 好きな言葉ではありませんが、負け組への配慮です。

今日本では、政、官、財こぞって、消費税、消費税と消費税率アップの大合唱ですが、近年の勝ち組と自認しておられる方方々に是非読んで欲しい下りです。医療、年金、生活保護などの社会的セーフティネットを弱い者に押し付けるのではなく、ドラッカーのいうように、強いものの義務として考えて欲しいものです。法人とは会社法によって存在をゆるされた、生まれながらにして社会的存在なのですから。

 その利潤は実体としてはⅠ.次元の資産の増加分として存在しています。その資産の増加の源泉がⅢ.次元の利潤です。利潤という概念上の存在は、資産の費消を通して、未来の費用として、又企業の、未来発展のための資本として使われていくものです。Ⅲ.次元で「未来費用」である「利潤」がⅠ.次元では「未来資本」と称せられる所以です。

<つづく 6.4K+1Kの連鎖の中に>

|

« 複式簿記に秘められた色即是空(4)試算表からB/S,P/Lへ | トップページ | 複式簿記に秘められた色即是空(6)4K+1Kの連鎖の中に »

コメント

見える権利を実体以上に肥大化させ、目に見えない義務を矮小化させる人間の性・・・
最近、お客様の事業計画・資本政策と実績の差異を分析する機会が多いのですが、自分の商品・サービスを必要以上に肥大化して、株主・銀行・外注先への責任を必要以上に軽視している会社が多すぎると思っていました。
法人、個人、人間の性と聞くと非常に合点がいきました。

投稿: 泰山北斗 | 2007/10/25 11:37

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/50017/16856994

この記事へのトラックバック一覧です: 複式簿記に秘められた色即是空(5)貸借対照表と義務と権利:

« 複式簿記に秘められた色即是空(4)試算表からB/S,P/Lへ | トップページ | 複式簿記に秘められた色即是空(6)4K+1Kの連鎖の中に »