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2008/01/27

映画「いのちの食べかた」を観て(1)食料生産の現場から

    <写真1.屠殺直前の牛>
1_5 マイミクのcandleさんのお奨めで映画「いのちの食べかた」を観ました。原題は「OUR DAILY BREAD」です。オーストリア生まれのニコラス・ゲイハルト監督のドキィメンタリー映画です。鶏肉、豚肉、牛肉、パブリカ、ホワイトアスパラガス、トマト、等など、食料生産も、効率を求めて工業製品の生産工場とまったくといっていいほど変わらないものになっています。
 その生産現場を、坦々と丁寧にカメラを回し取り続けています。ナレーションも、字幕スーパーもなく映し出される工場労働者の姿も、その会話も、工場の騒音と同じ力点で映し出しています。もちろん取材した企業名、地域も一切わかりません。
 観客には、監督の価値観も、意図も見えないようにしています。観客に、自分の目で見て自分の価値観で判断することを求めている珍しい手法のドキュメンタリー映画です。

映画は、鶏肉、豚肉、牛肉の生産から、パブリカ、トマト、ホワイトアスパラガス、農産物の生産も、徹底して、た効率化され、工業生産されている工程をひたすら追い、カメラを回し続けていますます。
 人間の文明は進すめばすすむほど、人間の営みの中から、汚いもの、嫌なもの、見たくないもの、見せたくないものを隠していきます。人々もそのほうが気が楽なのです。それらの見たくないものも現実なのですが、その現実から目を逸らしていると、人間は次第に弱いものになっていきます。現実生活にまつわる、裏も表も見る癖をつけていきたいものです。
 食料自給率39%の日本、家庭、レストラン、居酒屋どこへいってもその食卓にのぼる食材の61%は、輸入先の国、輸入先の企業、その工場で、外国人の手で、生産されたものです。その生産工程を見ることはできません。監督は、日本人のためにこの映画を製作してくれたのかもしれません。是非日本人の一人でも多くの方が、観て、そして食とは、生きるとは、なにかを考える機会になるといいと思っています。
 少し長くなりますが、映画のカタログから監督の製作の思いのたけを引用します。
  「この作品では、出来るだけ客観的な視線で物事を捉えたかったのです。僕が特に興味があるのは『なんでもかんでも機械で出来る』という感覚や、そういった機械を発明しようという精神,それを後押しする組織です。それは、とても怖い感覚で、無神経でもあると思います。そこでは、植物や動物も製品同様に扱われ、産業として機能させていくことが、非常に重要になっています。一番重要なことは、いかに効率よく、低コストで、動物が産み育てられ、数を保たれているかであり、新鮮で傷がついていない状態で食肉処理場届けられるための取り扱い方や、肉に含まれる薬品の使用量、ストレスホルモンの量が合法的基準値より低いレベルに保たれているか、ということなのです。誰も自分が幸せかどうかなんて考えてはいません。ただし、それをスキャンダラスと言うなら、僕達の暮らし方もスキャンダラスということになります。この経済的に豊かで、情け容赦ない効率化は、僕達の社会と密接にかかわっています。『有機栽培の製品を買い、もっと少ない肉を食べなさい』というのは間違いではありません。でも、同時にそれは矛盾していると思います。誰もが皆、機械化に頼って国際化した産業の恩恵を受けています。これは食べ物の世界に限ったことではありません。
 僕が下線を引いた部分、日本人にも耳の痛い話ではあります。昨年4月から日本の農政も効率化、コストダウン、競争力付与を狙って、大規模化へと舵を切っています。しかし効率化を求める農業には、土地の面積が決定的な要因になります。長年農政に依存して、自立心を失っ高齢化してしまった農家を株式会社化し、自立させようという、政府の意図はどんな結末になるのか?この農政で農家に未来はあるのだろうか、心配になります。
 この映画、そして監督がカメラの視線に込めた隠喩(メタファ)をどう受け止めるか?。農政に携わる官僚、政治家、農協の指導者、間接、直接農業に携わっている方々にも
「効率化とは?」
「競争する相手とは?」
「日本の農業の取るべき道とは?」を考える重要なヒントを含んでいます。

 写真1.も映画のカタログから転載したものですが、間断なく牛が一頭づつ、ドラムの奥から送り出されてきます。首を出した牛の眉間に人間が器具を使って電撃を加えると、一瞬で転倒し仮死状態になります。巨体はすばやくフックに吊り下げられコンベアで運ばれていきます。人間が近づくと、状況が分かるのか、どの牛も、突然悲しい目をして、首をよじり、いやいやをするシーンは目を伏せたくなります。
<続く>

<candleさんのミクシィ日記>
http://mixi.jp/view_diary.pl?id=659389198&owner_id=15217655

<シアター・イメージフォーラム上映中>
http://www.espace-sarou.co.jp/inochi/main/theater.htm

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コメント

コメントありがとうございます
<しじみさん>
エンデが残した暗喩は、難しいですね。エンデの遺言も、今なら分かると思うのですが。「モモ」も何度か読みましたが、その暗喩は歳を経ないとわからない部分もあると思います。
 この「いのちの食べかた」は、日本の農業、酪農の今後に生きる道を示してくれています。監督の暗喩です。日本は、西欧の真似をして食料生産するな、日本には「山川草木悉皆仏性」があります。安心で、安全は食料を人手をかけて作って、世界の中で、分かってくれる人々と、日本列島をメディアにして生きろ以外に、生き残る道はないと、思い定めて、覚悟を固めるときがきていると思っています。
 是非見ていただきたい映画です。

投稿: 懐中電灯→しじみさんへ | 2008/01/31 00:52

この映画は是非拝見したいと思います。
今日の日本の潮流に一石を投じるもの
ではないかと思います。
先日ビデオのレンタルで「モモ」(二度目)
を見ました。
一度目は5年くらい前に見たのですが
その時は「むずかしい映画だなぁ」と
思って見終わった気がしますが、今回の
二度目は、この映画はファンタジーという
設定ですが、どうしてどうして、
今日の世界の潮流に警鐘を鳴らす作品ですね。

投稿: しじみ | 2008/01/30 12:01

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