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2008/04/22

日本の明日の姿? 堤未果著「ルポ貧困大陸アメリカ」岩波新書

 このところ書店の店頭に平積みになっている岩波新書があります。堤美香著「ルポ貧困大陸アメリカ」です。「きっと日本もこうなる」日本の近未来を垣間見ることができます。まだ手にしていない方には是非手にしてみて欲しい一冊です。
 著者は丹念にアメリカの貧困の現場情報を集め、淡々と貧困の有り様を語っています。そしてその貧困を作り出すアメリカの社会の仕組みを解き明かしています。読者はきっとこの本の中に明日の日本の姿が重なって見えるに違いありません。この本は日本の近未来へのタイムマシンです。

 今世界経済は不況の入り口に立っていますが、その扉を開いた呪文「開けゴマ」は、サブプライムローンです。そのサブプライムローンは、経済知識の無い人々、本来住宅を購入してはいけない貧困層の人々に「持ち家に住む家族の幸せ」という夢を描かせ、言葉巧みに住宅を売りつけ、弱い者を喰うスキームです。
 アメリカの医療保険制度も徹底した民営化のため、中流家庭でも家族の中の一人が病に倒れただけで治療費のために一家もろとも貧困層に転落してしまいます。日本でも四月から後期高齢者医療保険制度が始まり、国民にとっての基礎的インフラである国民皆保険が分断され崩壊しようとしています。
 学資ローンで大学、大学院を卒業しても、職に就けずローン返済する若者を甘い条件で入隊させイラクに送り込んでいます。
 「自由の国」「アメリカンドリーム」という幻想に流入する不法移民さえ、永住権を餌に軍隊に取り込んでいます。在日米軍の若い兵士の不祥事が絶えないのも無理からぬことです。
 僕が赤線を引いた文章から、印象に残る一文を紹介します。
「もはや徴兵制は必要ないのです。政府は格差を拡大する政策を次々に打ち出すだけでいいのです。経済的に追いつめられた国民は、黙っていてもイデオロギーのためではなく、生活苦から戦争に行ってくれますから、あるものは兵士として、またある者は戦争請負会社の社員として巨大な戦争ビジネスを支えてくれるのです。大企業は潤い、政府の中枢にいる人間たちをその資金力でバックアップする。これは国境を超えた巨大なゲームなのです」
 
日本でも昨年防衛庁は省に昇格しました。そして憲法が改正され、自衛隊が自衛軍になり、極東米軍に組み込まれると、日本の貧困層に落ち込んだ若者が、戦争の最前線に押し出されていくようになるかもしれません。
 桑田次郎著マンガエッセイでつづる般若心経の冒頭に僕の好きな言葉があります。
「過去の『因』を知らんと欲せば、現在の『果』を見よ!」
「未来の『果』を知らんと欲せば現在の『因』を見よ」
 民主主義の怖いところは、未来のどこかで、「選んだのはお前たちではないか!」「自己責任だ!」と怒鳴られて終わりです。もしこの赤い表紙の新書が日本の未来の『果』であるとすれば、我々日本人は現在の『因=行動』を変えなければなりません。現実にはタイムマシンは存在しないのです。過去へのタイムマシンは”記憶”未来へのタイムマシンは”夢”、悪夢のタイムマシンには乗りたくありませんから。

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コメント

コメントありがとうございます
<hatoさん>
 英米の力を借りて、日露戦争を乗り切った日本が、勘違いして、英米と互角覇権争いに乗り出して、負けたわけですから、属国として生きるしか方法はないのでしょう。ただ臥薪嘗胆いずれは自立と思ったか思わなかったか?でしょう。
 僕は現実主義者ですから、現状を認識し、明日を想像して、明日のために、出来ることを今やっておくしかないと考えています。「未来は不確実」たとえ想像したとおりにならないとしてもね。
 アメリカの帝国主義が破綻するのは米ドルが破綻するときでしょうから、今しばらく時の経過が必要ですね。アメリカの帝国主義が破綻することを期待するなら、個人の日々の生活でも、一蓮托生の「円」の破綻にも備えておく必要がありますね。
 世界の覇権は多極化へむけて、とりあえずアメリカ、中国、EU、三国鼎立の時代に入るのではないでしょうか。

投稿: 懐中電灯→hatoさんへ | 2009/07/29 11:37

 現在のアメリカは崩壊寸前のローマ帝国と同じようなものでしょうか?

 そして、戦後の日本はそのローマ帝国に属国として支配されいてた、2000年前のユダヤとほとんど同じ状況にいます。

 当時のユダヤの権力者はローマ帝国にこびへつらい、ユダヤ市民の納めた税金はローマ帝国に上納され、そして、ユダヤ市民がローマ帝国の都合で行われる戦争に、駆り出されていました。

 まさしく、この関係は戦後の日米関係そのままです。

 おそらく、今のままでいけば遠からず、ユダヤがローマ帝国に滅ぼされたのと同じことが、この日本に起こるでしょう。

 それを阻止する方法は、懐中電灯さんの仰る生活者としての意識に、一人一人の国民が目覚め、かつ、日本国憲法に明記されている、主権者としての責任を果たし、自分の祖国の未来と運命を背負っていくことでしょう。

 今度の衆議院選挙の本質は、日本人自身が自分の祖国を生かすか殺すかが、問われるのだと思います。

投稿: hato | 2009/07/25 15:33

コメントありがとうございます。
<たかやんさん>
 孫の世代がどうなるのかとても心配です。国内経済が縮小していくので、日本国内は、段階的に弱いもの、より弱い者へと下から掠め取る流れは止まりそうもありません。
 我々老中世代が預貯金、不動産を持っているのですから、苦しい年寄りから取るのではなく、相続税をあげて、再配分すればいいのに、持っている勝ち組は、しっかり次代へ相続して、持たざる者は、次代に負担を強いるという政府の政策が、着々と進行しています。切ないことです。
 

投稿: 懐中電灯→たかやんさん | 2008/05/15 07:56

数年前、アメリカ人の友達とイラク戦争の話になりました。あのイラクの収容所での虐待をどう思う?と聞かれて、「何であんなことするのか分からない」というと、彼は「彼らはちゃんとした教育を受けたことがない人達なんだ。まともな教育を受けた人たちは戦争には行かないんだよ。」と言われました。アメリカに徴兵制がない理由を知った時、日本も危ないと思っていましたが、本当に現実になりそうで恐いです。教育現場が崩壊し、公立と私立の格差が出ても、それが「作戦」だとしたら・・・・中学校でどうしようもなかった子達が「ヤクザ」や「右翼」に勧誘されるように、きっと軍隊は勧誘していくのでしょう。そして本物の武器を持たせ、本当に人を殺すことを教えていく・・・そんな日が来ないように、これからの「教育」に残りの人生をかけなくてはいけません。5歳の息子が戦争に行くことのないように、そして戦争に行かせることのないように。

投稿: たかやん | 2008/05/08 10:19

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