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2008/08/28

五輪銅メダルに見る事業承継の大切さ(2)

4.      リレーとラグビー

    未上場企業の事業承継の問題は、二つの相反する問題を同時に解決することを求められている。事業経営の承継は、未来へ向かう問題であり、資産としての株式の承継は、これまで築いてきた財産の相続という過去を清算する問題である。事業経営の承継は、陸上競技のリレーであり、バトンを未来へ託していかなければならない。資産の継承はラグビーである。資産であるボールは後方(過去)に向かって渡さねばならない。そのラグビーは、スポーツのラグビーとは違って、決して自分でトライできないという厳しいルールがある。ラグビーのボールがサッカーボールや野球のボールと違って、思い通りに跳ねたり、転がったりしてくれない、楕円形の、形状をしているのも相続財産に似て示唆に富んでいる。
 己の命の有限さに気がつかず、死ぬまで後継者に経営をバトン渡さない経営者も多い。陸上競技に喩えるなら、バトンタッチの手前でよろけて転倒、肝心のバトンは、すっ飛んで転がっていく。後継者と自覚した者、周囲から認められた者は慌てて転がったバトンを拾い走り出す、ここで時を失い、体勢を崩してしまう。後継者が定まっていなければ、次走者がバトンを拾って走り出すまでに、さらに混乱は続いてしまう。
 資産であるボールは、家族、親族へと相続として手渡される。持てる者は、しばしば相続問題で残された家族、親族で骨肉の争いを繰り広げ、残された相続対象者の未来を破壊する。相続問題が起こるのは、最後まで持っていた者の強欲ゆえであって、相続対象者の強欲ではない。生身の人間は欲も生身、揉めるのは当然なのである。

    資産を作った者は、己の責任において相続を決める責任がある。作るだけは無責任といわなければならない。あまり早く渡してしまうと、自分の残りの人生に支障がでるかもしれない。ボールを持ったまま倒れれば、相続対象者の未来を破壊する、持てる者の悩みは深い。

5. 資産と資本の意味

    貸借対照表をまともに読めるひとは極めて少ない。多くは数字の面しか捉えていないし、資産と資本の違いが分からないひとも多い。貸借対照表の左側(借方)にはお金に換算できる会社の資産が計上されている。右側(貸方)には、資本、事業に資金を投じた人びとの持分の割合が表示されている。買入債務や銀行からの借入金といった他人資本(第三者の持分)と株主資本(株主持分)である。
 持分というのは、会社を解体するに当たって、左側の資産を換金したお金の分配を受ける権利のことだ。当然まず第三者持分が優先し、残れば株主が取る。残ればという理由は、たとえ貸借対照表上に株主持分がプラスであっても、その分現金があるわけではないからだ。
 左側の資産の内、現預金・売上債権以外の資産は、事業が継続しているからこそ資産であって、事業活動を停止した瞬間に金銭的価値はほぼゼロに等しい。棚卸資産や固定資産は、過去に投じた現金のうち、事業を継続する中で回収しなければならない、未回収の残高を示しているに過ぎない。売上債権の中にも回収不能な売掛金、受取手形も存在する。左側の資産とはかくも不確かなものなのだ。左側の資産は目に見えるもの、右側の資本はその資産を成り立たせている、目に見えないものである。般若心経では、目に見えるものを「色」といい、その「色」の存在を成り立たせている目に見えないものを「空」といっている。その「色」と「空」は表裏一体の関係にある。そしてこの目に見えるものと目に見えないものの表裏一体の関係を「色即是空」「空即是色」といっているのだ。

6.      株主持分の継承と資産の継承

    株主≒経営者という多くの未上場の会社で、事業を継続しながら、株主持分を継承するとすれば、ラグビーのボールとして継承する経営者の家族、親族になる。しかし株主持分で成り立っている資産は、事業の継続を前提に資産であるから、事業のバトンを継承する者が事業の用に供していく以外に存在理由がない。ここに未来へ継承するバトンと過去へ継承するボールの間の二律背反が起こる。「色即是空」「空即是色」が成り立たない。
 後継者が育っていて、かつバトンとボールを一人で継承できるなら問題は起きない。バトンを継承する者は育っているが、ボールを継承する者が、別人であったり、さらにボールを分割しなければならない状況におかれると問題は大きくなる。ましてボールは継承したい者は存在するが、バトンを継承できる者がいない会社では、事業承継はさらに困難になる。問題は発生する直前までに解決しなければならないものであって、発生してからでは手遅れだ。発生してからの問題処理は当然のことながら多くの犠牲を強いることになる。

<つづく>

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