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2008/12/09

「利益は未来費用」とドラッカーから学んだのではなかったか?

「利益は未来費用」とP・F・ドラッカーから学んだのではなかったか!
 日本の著名な企業が、契約社員、派遣労働、新卒の内定取り消しといった労働問題で批判に晒されています。麻生総理も、ささやかながら、批判をしていますが、元を正せば、1986年7月に派遣労働を認める法律を作ったところに起因します。賃金とという固定費を変動費化する、企業にとって目先の利益を優先する、安易な方法を企業と国が選択したのです。
 派遣切りが当たり前になる中で、正社員の解雇も含め、労働者の首切りに対する罪悪感が、日本の企業にも希薄になってきていることはとても悲しいことです。今マスコミをにぎわしている輸出企業の多くは、2008年3月決算でも「史上最高益を更新」「XX年連続増収増益」と、経済紙の紙面を大見出しで飾っていたのです。

 たとえ海外工場の閉鎖といっても日本に関係ないではなく、日本の経営者は欧米と違って、少しだけ目線が先を見ていると自慢できる国でありたいものです。
 戦後の日本の成長を創り出した企業群、そこで育ったはずの経営者が、史上最高益を出して、6ヶ月足らずで、社員の首切りを高らかに宣言し、お茶の間の家族の前で醜態を晒してしまいます。もっとも勝ち組のご本人も家族も、醜態には見えていないのでしょう。
 戦後の経済成長を担ってきた企業の経営幹部の多くはP.F.ドラッカーに多くを学び、勇気付けられてきました。中でも「現代の経営」はバイブル的存在です。日本の経営担当者の書棚には、欠かすことのできない一冊でした。
 ドラッカーの経営学が、アメリカの経営者より、むしろ日本の経営者に絶賛され、受け入れられたことも忘れてはならないと思います。1980年代まで日本的経営といって賞賛され、自慢し、嫉妬され、そして今崩壊しつつある日本的経営の基本は、「現代の経営」この一冊にあるといっても過言ではないと思います。
 その「現代の経営(上)」(1965年版ダイヤモンド社野田一夫監修)P62に「利益の機能」と題する一節があります。
「未来について確かなことは、未来が不確かであってかつ多くの危険性をはらんでいるという事実である。」
「事業はつねにこの危険に備え、危険を補填するに足るプレミアムを作り出さなければならない。しかもその源泉はただ一つしかない。つまり、それは利益である。」
「企業はまた教育費や防衛費のごとき社会費用(ソーシャル・コスト)にも寄与しなければならない。このことは、税金を納めうるだけの利益をあげなければならないことを意味する。最後に企業は、将来の発展のための資本も生み出さなければならない。しかしこれらのことはさておいて、事業がなによりも第一に目指すことは、自己の危険を補償するにたる利益なのである。」
  P.F.ドラッカーは事業の利益について、最大利益の確保ではなく、存続可能利益という最小利益を確保せよと説いています。
   <損益分岐点等式>
Photo  僕も講義の中で毎々図「損益分岐点等式で、”粗利益(F)=固定費(F)+利益(G)”の話をします。
 まず①企業は固定費(F)をかけて、事業の形を整え、成長力を醸成します。これは未来に働きかける行為です。
 ②商品がお客様のところに届き、お客様から粗利益(売上-変動費)をもらい、③その粗利益から、過去に使った固定費を回収して、残れば利益です。
 ドラッカーはこの利益を未来費用と定義をしています。固定費は現在費用です。

 ”未来は不確実”その不確実に働きかけるのですから、思い通りにはいきません。思い通りにいかないと、現在費用を補償する粗利益が得られないこともあります。利益(未来費用)はマイナスになることも生じます。このマイナスの未来費用を補償するのは、貸借対照表に蓄積した、過去の利益(未来費用)のはずです。
 今の経済状況は、100年に一度の未曾有の不況といわれています。しかしこの7~8年、日銀のゼロ金利政策による円安誘導のお陰で、一ドル115円~125円という為替水準が維持されて、その円安で輸出企業は企業の実力以上の利益を上げてきたはずです。 曰く、史上最長の連続増収増益です。その利益は未来費用のはずですが、その利益を使うことなく、直ちに、人件費という現在費用を切り捨てに手をつけるのですから、ドラッカーの教えはすっかり忘れてしまったのでしょう。
 企業としては、派遣労働、契約社員の賃金は変動費です。図”損益分岐点等式には出てきません。下請け企業の外注費も同様に変動費、生産量によって調整する項目であり、企業を維持するエネルギーである、現在費用(固定費)という意識の中から抜け落ちています。
  確かに企業(会計的)にとっては、生産量に応じて調整する変動費に過ぎませんが、働く労働者、下請けの中小零細企業にとっては、変動費ではなく生活を固定的に維持する、現在費用(固定費)なのです。せめて過去に未来費用を溜めるだけの賃金、外注費が支払われていたのなら、自己責任と切り捨てられても、あきらめもつくでしょうが、ベルリンの壁の崩壊を契機に労働者受難の時代が続いています。
 来春の2009年3月決算でも多くの企業は利益(未来費用)を計上し、配当、役員賞与支払われることでしょう。日本経済を担うはずの、経団連のリーダー達が、「苦渋の選択」と言って、たっぷり溜め込んだ内部留保(未来費用)、積み上げたネットキャッシュを一度も未来の不確実性のために使うことなく、操業度に比例する変動費だからといって、派遣社員、契約社員を切り捨て、下請け中小企業を切り捨ててしまうのです。
 落語のお題「風が吹けば桶屋が儲かる」は実は複雑系のことです。、CSRを高らかに謳いあげる、日本経済をリードする著名企業が、極めて自己中心的に、短期的思考で、自社に都合の悪いことを外部経済へと切り出してしまうと、結果として、己の身に消費の減退と言う形で戻ってきます。今の日本は国家の品格ではなく、日本を導かなければいけない、経済人、政治家、官僚といったエリートの品格が問われているのではないでしょうか?。
 ベストセラー「国家の品格」を書いた藤原正彦さんの罪は、書名を「国家の品格」と命名して、一億総懺悔にしてしまったことではないでしょうか。「戦後政官財エリートの品格」と命名するとよかったのではないでしょうか。
 P.F.ドラッカーは日本のエリート経済人の今の姿を見て何を思っているのでしょうか。

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コメント

リンク先は、ドラッカー学会参加者が書いた資本資本主義についての日記です。

投稿: 通りすがり | 2009/01/18 13:01

コメントありがとうございます
<吉田太一さん>
>なんとも不細工な一流企業の経営者さんたちだと
本当ですね。困ったことに、鏡を持っていないのでしょうか、自分が無様だと気づいていないことですね。
 

投稿: 懐中電灯→吉田太一さん | 2009/01/07 23:01

こんにちは。
本当におっしゃる通りですね、大企業も会社を壊さないために経営している幹部ばっかりだという事ですね。

内部留保金をここで使って雇用を守れば、企業の本質的な信用が社会的に高まるるチャンスだったのに・・

何百兆もの内部留保を使ってもっと危機感を持ったほうがいいのではないでしょうかね。

なんとも不細工な一流企業の経営者さんたちだと思います。


投稿: 吉田太一 | 2008/12/22 11:22

明賀義輝先生お久しぶりです。
憶えて頂いてないと思いますが昔大変お世話になりました池田 勝夫(http//minkan119.com)と申します。明日12月17日10時頃、仕事でお近くの花の舎病院へ行く予定です。もしお時間がお許し出来るのであればお会いして頂けたら幸いに存じます。私の携帯は090-7229-9352です。24hいつでもご連絡頂けたら幸いです。

投稿: 池田 勝夫 | 2008/12/16 21:42

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