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2009/06/24

グラン・トリノを観て(2)次代へ伝えるもの、遺すもの

 ラストシーンで思わず涙が滲んできます。クリント・イーストウッド扮する頑固老中コワルスキーが不良グループに蜂の巣にされ死にます。残された財産を誰に遺すのか?息子、孫の前で裁判官が遺言状を読み上げるのです。
 遺された住宅は、長年連れ添った妻の葬儀の場を頑固さを露わに示すことで、悲しみに耐えている父親を、「まったく、親父ったらぁ頑固なんだから」と眺めていた息子夫婦、父親のかすかなメッセージを見落とした息子夫婦に遺されることはなく、教会に寄贈されてしまいます。

長年連れ添った夫の頑固さの行き先を案じていた妻は、その頑固さを溶こうと、未熟な若者の代表である神父に、夫が教会へ足を向けるように説得するすることを遺言しました。その遺言を守りながら、戦争を知らない未熟な若者の神父は、コワルスキーの死を通して、本当の人の死の意味に気付くのです。住宅は、妻の遺していった夫への気遣い、思いやりに包まれた遺品として教会に遺贈されたのです。
 映画の題名の「72年もののグラン・トリノ」はフォードの工員だったコワルスキーが磨き上げた遺品です。生前から孫娘が狙っていました。そのグラン・トリノを遺品として、託されたのは、あのモン族の少年タオでした。
 僕の縁者吉田太一さんは「天国へのお引越しのお手伝い」を標語に、孤独死された方の遺品を整理する、遺品整理業を起こした方ですが、彼は日々の現場経験から常々「残された遺品に二通りあって、逝った方が大切に思う遺品と、遺族が大切に思う遺品とがまったく異なる」と語っています。頑固なコワルスキーはそれを己の責任として、己の命と共に、見事に一致させたのです。
 ラストシーンは、高齢社会日本のこれからを暗示するシーンです。介護されながら死を迎える老中、介護しない息子夫婦、娘夫婦、さて遺産は,何処へ?。
 その陰で介護に携わる低賃金で働く若者の未来。「それが世の中だ」といってはお仕舞いです。遺す側の老中も、政府も準備は早いほうがいい、遅れれば遅れるほど、社会に累積していくその付けは、高くつきます。
<吉田太一さんのHP>
http://www.keepers.jp/

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