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2009/11/16

映画「クリスマスキャロル」を観て(1)「現在・過去・未来」

名作「バック・トゥ・ザ・フュチャー」のロバート・ゼメキス監督が チャールズ・ディケンズの小説「クリスマス・キャロル」をデジタル技術を駆使して3Dで映画化するというので、上映されるのを首を長くして待っていました。11月14日上映初日早速家内を伴って観に行きました。ファンタジー映画でもあり、子ども連れの若い家族も多く、気のせいか地方都市の小さなスクリーンの館内も久々に賑わいを感じさせる雰囲気でした。
 1843年に発表と同時にベストセラーになった小説の舞台は産業革命の最盛期、格差が拡大していく、大不況下のロンドン、主人公は金貸し守銭奴スクルージです。町中の嫌われ者守銭奴スクルージはクリスマスの夜三人の精霊の訪問を受けます。

 三人の精霊は夫々、スクルージの過去、現在、未来を見せるのです。第一の精霊は「お前を改心させるために来たのだ。」と言ってスクルージを子どもの頃暮らしていた田園に連れていきます。
 クリスマスのその日友達から仲間外れにされ学校に取り残され、一人で本を読んでいる男の子の姿を見つけ、冷酷なスクルージの目に涙を滲ませます。少年の頃の己の姿です。次の場面はフィアンセとの別れの場面です。「貴方は私より大事なものができたのね」「持参金のない貧乏な私より『金色のもの』が大事になったのでしょう。私からお別れを言います」若いスクルージの未来が変わり始めたときの姿です。
 ディケンズはフィアンセの口を通してこう言い残しています。
「世間から侮られまいとする望みの前にはほかの希望はすっかり捨てておしまいになりました。私はあなたの気高い向上心が一つずつ枯れ落ちて、とうとう、お金儲けという一番大きな欲がすっかりあなたを占領してしまうのを見てきましたのよ。そうじゃありませんか?」
「私は約束を取り消してあげます。以前のあなたへの愛のために、心から喜んで」
 残酷な精霊はそのフィアンセが夫や子ども達に囲まれ、幸せなクリスマスを過ごしている姿まで見せつけるのです。
 第ニの精霊はスクルージが劣悪な労働条件でこき使っているたった一人の社員ボブ・クラチットの家庭のクリスマスを通してスクルージの”現在”を見せます。貧しいクラチット家のクリスマスは七面鳥の代わりに鵞鳥、そして分けると小さなひとかけらにしかならない小さなプディングですが、それでも家族が揃って楽しくクリスマスを祝うのです。、ボブはまず、日頃こき使われている冷酷な雇用主スクルージの健康を祈る儀式からクリスマスを祝います。「メリー・クリスマス、スクルージさんの健康を祝います!」
 第三の精霊は孤独な死を迎えたスクルージの未来へ連れて行きます。いつもの掃除婦はスクルージの亡骸からシャツを剥ぎ取り、寝台のカーテン、毛布を取り外して古着屋に持込んでいます。街にはスクルージの死を悼む人は誰一人なく、葬儀にも墓場にも訪れる人さえいないのです。その光景を見てスクルージはやっと気がつきます。
  精霊が去り、目覚めたスクルージは己の未来の姿を変えるべく、現在の行動を変えることを決心します。町中が明るく輝いて見えるようになるから不思議です。クラチット家に贈り主の名前を伏して、七面鳥を贈り、ボブの賃金を引き上げ、病気のボブの息子の面倒を見、毎年クリスマスに招く甥の家を訪ね、陽気な甥の祝福のお裾分けを受け、幸せなひと時を過ごすのです。
 ゼメキス監督が「バック・トゥ・ザ・フューチャー」に託したラストメッセージはこのスクルージの人生にもしっかり託されていました。
「過去にも行ってみた、未来にも行ってみた」
「結局未来はいつも白紙なんだ」
「自分の未来は自分でつくる」
 三人の精霊は外から訪れ、スクルージに気づかせたのではなく、スクルージ自身の内なる、おのずからなる気づき、鈴木大拙が「霊性」と名付けたものです。ゼメキス監督は、ジム・キャリーにスクルージの少年時代、17歳、27歳、現在、三人の精霊と七変化させています。とりわけ三人の精霊をも同じ俳優に演じさせたのは、作品にこの内なる気づき、霊性の目覚めの想いを込めたものではないでしょうか。  

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