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2011/01/08

お奨め「カネと暴力の系譜学」萱野稔人著

書名     カネと暴力の系譜学
著者名  萱野稔人
出版社 河出書房新社ーシリーズ道徳の系譜ー
おどろおどろしいタイトルのこの本が、「シリーズ道徳の系譜」の中の一冊というのも驚きです。第一章は「カネを吸い上げる二つの回路」そしてその冒頭は「生きていくためにカネが必要だ。・・・・哲学や思想もカネを手に入れる方法を考えないわけではない。一般に思われているほど、哲学や思想は生きるということに無関心ではないのだ。」と好奇心をそそる書き出しでではじまります。
 「消費税増税やむなし」「辺野古移設やむなし」「アメリカは日本を守ってくれている」といった言説も一度括弧で括って、この本を読んでから再考してみてはいかがでしょう。「信じることが大切だ」と声高に唱える方々に、反論するのことは難しい、しかし弱者はナイーヴなだけでは生きていけない、「Why」「なぜ」「どうして」と、幼児のように問うことを忘れてはならないと思う。弱肉強食の世界と語られるサバンナ、そのサバンナで百獣の王と称えられる?ライオンでさえ、シマウマを狙うときは射程距離に入るまで、気づかれないよう、そっと風下から忍び寄るのですから。「王」と名乗る強者なら正々堂々と名乗りをあげて挑んでもいいはずなのに。

この本の書名がおどろおどろしく見えるのは、「暴力」と「搾取」がキーワードになっているからです。共産主義が崩壊して既に20年、すっかり忘れていた”搾取”という言葉を思い出させてくれます。そして「なぜ税金は国民の義務なのか?」。
 貨幣経済の今、人はお金が無いと生きていくのは困難です。そのお金を手に入れるには、1.他人からお金をもらう、2.自分で働いて稼ぐ、3.他人から奪う、4.他人を働かせて上前をはねる、といった方法があります。3.が国家とやくざ組織、4.が資本です。2.は労働者です。かって3.と4、兼ねていた国家が民主主義、国民国家?として、4.を民営化して、3のみを国家の役割とした。と著者は書いています。
  中国の"一党支配資本主義、"プーチンのロシア"資本主義、主権国家であるはずのイラクを攻撃して国家元首を処刑するアメリカの覇権主義も、著者の云う、「国家は他を圧する物理的暴力をベースに己の暴力を正当(善悪、正邪ではなく)化、合法(法を作ることで)化することで成立している」ことから推論するとみえてきます。
 又自己の暴力を唯一合法化することで、他の暴力を非合法化して、内に取り込み利用する。戦前港湾労働者の雇用を非合法暴力に任せてたり、炭坑労働者の管理や暴動鎮圧に利用してきた非合法暴力。現在の人材(労働者)派遣業も、この非合法労働者雇用の合法化と同じ文脈で捉えると見えてくると著者は語っています。
 21世紀も11年目、著者の云う「暴力」「搾取」「カネ」の3Dメガネを掛けて、見えにくく、生きづらくなった世の中を見直してみてはいかがでしょう。
 グローバリゼーション、ボーダレスの時代だからこそ、回り道でも、立ち止まって「国家とは何か?」「資本主義とは何か?」を問い直してみる価値があると思うのです。
 余談ですが、今朝の日経新聞一面記事の「貿易保険『海外工場の輸出に適用』企業の海外展開に対応」も少しおかしいと思うのは僕だけでしょうか?海外の工場で生産した製品を外国に販売するのに貿易保険という名の税金を使うのです。海外工場では国内の雇用を創出することもないのですから。
 諸外国とそれほど実質税率に差のない法人税を引下げたり、福祉を削った上で消費税を目的税と誤魔化して増税を画策している等々、おどろおどろしい書名の哲学の本が示唆していることは、既に起こっている現実のようにも思えます。

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