« 八ヶ岳縦走(2)八ヶ岳の黎明 | トップページ | 八ケ岳縦走(3)キレットを越えて主稜部へ »

2011/10/28

お奨め「それでも、日本人は『戦争』を選んだ」加藤陽子著

書名  「それでも日本人は『戦争』を選んだ」
著者  加藤陽子
出版社 朝日出版社
 我々老中世代でも多くの方が日本の近・現代史を学んでいません。高校の日本史の授業でもせいぜい日露戦争まで、何故か三学期には時間が足りなくなってしまいます。その上歴史教育の多くが出来事と年号の暗記に終始して、古今東西の関係性(因→縁→果)という本来の歴史の学び方で学んでいないように思います。
 歴史として知っている、と思っていることの多くは歴史小説によるものですが、いつの間にかそのフィクションも歴史的事実と混同してしまいがちです。その典型的な事例が我々世代に多い司馬史観ではないでしょうか。間もなくNHKで放映される小説「坂の上の雲」がその代表例といえると思います。司馬史観も小説に編みこまれた司馬遼太郎の歴史観です。
 明治維新から太平洋戦争敗戦までの80年間は日本人にとって稀にみる対外戦争の時代でした。日清戦争→日露戦争→第一次世界大戦→日中戦争→太平洋戦争と”なぜ日本人は戦ってきたのか?”この本は戦後掘り起こされた資料なども読み解きながら著者が戦争を通して語る日本の現代史です。 
 

 貧しい農村から満州開拓民として送り出された農民、その見返りに村に奨励金として支給された助成金、公共工事は現在の原発行政と同じ政策です。80年を貫く太平洋戦争敗戦に至る道筋も、核の平和利用を掲げてから3.11福島原発事故に至る道筋と酷似しています。
 驚くのは共に第二次世界大戦に敗戦し国土が焦土と化したドイツでは、国民の食料事情は開戦時より戦争終結時のほうが良くなっていたと記されています。日本では終戦時には開戦前の60%に減少しています。戦死者の90%は敗戦が決定的になった後の1年半に起きています。日本の為政者の国民の命軽視の一端がそこに現れています。
  著者は最終章の最後を「天皇を含めて当時の内閣や軍の指導者の責任を問いたいと思う姿勢と、自分が当時生きていたとしたら、助成金ほしさに分村移民を送りだそうと動くような役人、あるいは村長、あるいは村人の側にまわっていたのではないかと想像してみる姿勢、この二つの姿勢を持ち続けること、これが一番大切なことだと思います。」と結んでいます。
 自他の対話、E・H・カーの名句「歴史とは現在と過去との間の尽きることを知らぬ対話」に通じる言葉です。
 原発の存続の是非、TPP加盟の是非、今日本社会の未来を変える大きな決断を迫られている為政者(政治家、官僚)は、なぜ国民に問うこともなく、強行しようとしているのだろうか。 日本の未来の有り様を決める大事な”今ここ”で、後の世に格差社会に沈んだ我々の子孫が「それでも日本人は『原発』を選んだ」、「それでも日本人は『TPP』を選んだ」という歴史書を読むことになる前に読んでおきたい価値ある一冊です。

|

« 八ヶ岳縦走(2)八ヶ岳の黎明 | トップページ | 八ケ岳縦走(3)キレットを越えて主稜部へ »

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/50017/53071492

この記事へのトラックバック一覧です: お奨め「それでも、日本人は『戦争』を選んだ」加藤陽子著:

« 八ヶ岳縦走(2)八ヶ岳の黎明 | トップページ | 八ケ岳縦走(3)キレットを越えて主稜部へ »