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2013/08/03

今読む堤未果著「(株)貧困大陸アメリカ」

書 名 「(株)貧困大陸アメリカ」
著 者 堤未果
出版社 岩波新書
 著者の今回のルポは主としてアメリカの農業の現状です。P105に「遺伝子組み換え作物で消費者の健康や環境に被害が出ても、因果関係が証明されない限り、司法が種子の販売や植栽停止をさせることは不可とする」とあります。2013年3月28日、オバマ大統領の署名によって成立した法案の一節です。別名”モンサント保護法”というのだそうです。巧妙に包括予算割当法案の中の第735条として紛れ込ませて成立させているといいます。
 日本人がこの一節を読んだ瞬間に、この一冊すべてを読む義務を負うのではないでしょうか。今回の参院選挙で日本国民は、己の投票行動の如何にかかわらず安倍政権に長期安定政権のお墨付き与えてしまいましたから。ねじれているからこそ参議院の存在価値があるにもかかわらず、「ねじれは悪いこと」というプロパガンダに洗脳されて。
 安倍長期安定政権のもとTPPに加盟し、憲法を改正し、日本列島はどこへ向かうのでしょうか? TPPが発効すると、世界のGDPの40%を占める国々が加盟することになります。当然その国の国民はそのTPPという条約の傘下に組み込まれるのです。日本が加わってはじめて成り立つこの仕組に、「遅れて参加した」と強調し、己を卑下して身を縮めて出席する、この遅参したという形そのものに欺瞞がありそうです。なんと来春オバマ大統領が日本を訪問するといっています。よくできたシナリオです。
 このルポで、今のアメリカの農業が生産から食品加工その流通と、川上から川下まで、すっかり寡占化した姿をみることができます。遺伝子組み換え、農薬、抗生物質、成長ホルモン等々化学物質に汚染された作物の現状を垣間見ることができます。TPP傘下に暮らすことになる人々の食料は、このルポに描かれた作物をベースにするようになるのです。たとえ今すぐにはアメリカから買わなくても、低価格競争に晒され、自国の農産物の作り方も大量生産に変わっていき、中小零細生産者は淘汰されていくでしょうから。
 古今東西人間は、未来を知りたいという欲求を持っていると思うのですが、いざ未来の悲惨な状況を垣間見ると、それが近々の未来であればあるほど、誰もがまさかと眼を覆ってしまうのかもしれません。著者は2008年「ルポ貧困大国アメリカ」、2010年「ルポ貧困大陸アメリカⅡ」と、「今ここ」のアメリカそして近未来の日本の姿を提示し続けています。前二冊では貧困を作り出す仕組みとしてのローンにまつわるルポです。
 サブプライムバブルは貧困層に住宅ローンを貸しつけて支払不能になったら一家を路上に放り出してしまう話、バブル崩壊の穴は税金で埋め戻す話です。進学ローンで卒業と同時に無職のまま借金を背負わされる若者、その若者は借金を返済するために軍隊に入りイラク、アフガニスタンに送り込まれるのです。日本でも自衛隊が国防軍になって集団自衛権が明記されても、徴兵制がないから強制的に戦場に送り込まれることはないという意見もあります。が、いまや徴兵制は不要です。格差社会が身分社会化して、貧困層が固定化すれば、職のない若者は生活のために国防軍に入隊するようになります。その若者を集団自衛権のもとに戦場に送ればいいのです。
 我々庶民には、まさかそこまでと国家を超える、想像を超える仕組みが今アメリカにできつつあります。TPP傘下の国は、国が企業から訴えられるのです。今アメリカは先進国で唯一遺伝子組み換え食品の表示義務のない国です。TPP傘下の国が表示義務を課せば、アメリカの企業は、非関税障壁として、その国を訴えることができます。訴える機関はアメリカが支配している機関ですから、なにをかいわんやです。
 今のアメリカという国家は、資本という眼に見えないものを神として実体化した一神教が支配する国家になっています。反骨の映画監督マイケル・ムーアが映画「キャピタリズム-マネーは踊る-」で表現した「プルトノミー国家」です。日本列島もこのキャピタル教という一神教が教線を拡大しています。もうすでにプルトノミー国家になっているのかもしれません。眼を覆うか眼を見開くか、いずれにしろまずこの一冊を手にしてからにしてはいかがでしょう。眼を覆いたくなったら前二冊も読んでからに。僕は眼を見開きながら隠れ仏教徒としてひっそりと生き抜きたいと祈っています。(苦笑)

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