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2013/12/22

今読む「星の王子さま」(2)「責任とは眼に見えないもの」

 3.11以後「絆」が強調されています。2011年は清水寺の”今年の漢字”にも選ばれています。この絆を広辞苑で引くと「馬・犬・鷹など、動物をつなぎとめる綱」とあります。本来束縛、呪縛を連想する漢字でしたが、3.11以後にわかに「支え合い」「助け合い」といった人と人との結びつきを連想するように変化しています。”今年の漢字”に選ばれたのも、後者のイメージがあってのことでしょう。悪いことではありませんが、人間とはいい加減、勝手なものです。これまで個人主義と利己主義を取り違えて、経済第一主義で、家族関係、人間関係を希薄にしてきた日本人に、にわかに助け合い、支え合いの関係を求めても無理というものです。つくれるはずはないのです。
 

 しかしそうはいっても経済第一主義の行き着く先に広がる格差社会にはこの絆を助け合い、支え合いの意味で結んでいく必要があります。無理といわずつくれるはずなないとあきらめないで絆を結び直していくことが必要です。
 サン=テクジュペリは絆を結ぶことを「なつかせる」と表現しています。①の河野万里子さんの翻訳です。女性らしい優しい言葉です。しかし岩波版の訳者内藤濯さんも②の著者水本弘文さんも「飼いならす」と翻訳しています。ちょっと過激な表現ですが、このほうがサン=テクジュペリの眼には見えないメッセージはより伝わるのではないでしょうか。そうです。王子さまは自分の都合で勝手に飼いならしたバラの花を星に残したまま勝手に旅立ってしまったのです。飼い慣らした責任を放棄して。
 10歳(1953年)の頃、近所のお兄さんから赤い眼をした可愛い白うさぎを二羽もらったことがあります。喜んで家に帰ると父親はお前には飼えないから返してこいというのです。どうしても飼いたいというと、それなら責任を持って飼えといいます。器用だった父親は排泄物の掃除がしやすいように簀子付きの檻を作ってくれました。それから毎日喜び勇んで八百屋にいって野菜くずをもらってきて餌を与える日々が続きました。3ヶ月もするとすっかり飽きてしまい、友達と夕暮れまで遊んでいて、しばしば餌を与えるのを忘れてしまうのです。汚れる檻、やせ細るうさぎ、もらったときの真っ白なうさぎは汚れて抱くこともできなくなってしまいました。それからしばらくすると父親は薪割りのナタを持ち出し、うさぎの首を紐で縛って、さあ紐を端を持っていろといます。ナタを首に当て、眼を背けるな!うさぎが可哀相だから命を断つのだ、うさぎはお前が責任を果たさないから命を絶たれるのだというのです。
 そしてその肉をすまし汁にいれて「さあ食えうまいぞ」というのです。泣きながら口に運んで飲み込んだ記憶を「星の王子さま」はまざまざと思い出させるのです。それから60年我が家では二度と生き物を飼うことはありません。

 王子さまはバラの花に責任がある、絆を結ぶということは、結んだ相手対して永遠に責任があると、サン=テクジュペリはいっています。バラの花に首輪をつけ紐で繋いだ木柱は自分そのものなのに、僕も、王子さまも途中から自分が首輪をはめられ繋がれていると勘違いしてしまったのです。
 絆を結ぶとは、お互いに主体的に首輪をつけ紐の端を持ち合う、主体的に飼い慣らし、主体的に飼い慣らされることなのでしょう。首輪や紐は目に見えますが、絆という関係性は眼にはみえないのです。理不尽に思えた父親の行為も眼には見えない責任の発生源の存在を教えていたのです。責任は引き受けるもの、果たすものであって、結果に対して取るものではないと。
 「星の王子さま」を読めば眼に見えないものが眼にみえるようになるわけではなく、眼に見えみえないもの、こころで見なければ見えないものがあることを知っておくことが大切なのでしょう。
 京都の龍安寺は日本人なら一度は訪れるところ、枯山水の石庭の美しいところです。石の配置から虎が子を背負って海を渡っているように見えるともいわれています。石は15個配置してあります。しかしどこから見ても14個しか見えない、どこから見ても一つの石は見えないように配置されています。悟りを開いたいかなる高僧名僧といえどもまだ見えないものがあるという禅の公案になっているそうです。童話「星の王子さま」も石庭も、永遠に眼に見えないものの存在を伝えていくことでしょう。(続く)

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