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2017/10/21

「内部留保課税」は非富裕層へのリップサービス?、それとも簿記の原理を知らない言説か?

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1.「いのち」に課税できるのか
大企業の内部留保が300兆円と増殖していることからこのところ内部留保課税を掲げる政治家や経済評論家が出現して、様々な意見が噴出しています。ですが、これは賃金減少に苦しむ非富裕層へのリップサービスのひとか、真面目に提起しているとすれば、複式簿記の構造を知らない無知のひとの言説です。図のように複式簿記は4象限になっています。右(貸方の合計と左(借方)の合計は必ず一致するのです。
 
 第一象限には「負債・資本」、第二象限には「資産」、第三象限には「費用(利益処分を含む社外流出)第四象限には収益(売上等)が記載されています。
上下二つに切断して、第一、第二象限を貸借対照表(以下B/S)、第三、第四象限を損益計算書(以下P/L)命名されています。

B/Sの右半分に負債と資本と名前がついているので、複式簿記を知らないひとは、なにか実体があるものと勘違いしてしまうのですが、ここは金額表示はあるものの実体はないのです。ですから資本から資本金を差し引いた残りの内部留保も実体のないものなのです。内部留保課税とはその実体のないものに課税しようというのですから無理筋なのです。法人税との二重課税とか理由付けしているのも内部留保を実体とみている誤りです。

B/Sの構造は左に実体のある資産(東芝の不正会計のように近年これも怪しいのですが)右にそれを成り立たせている「何か」、眼に見えないものなのです。人間に例えるなら左が肉体、右がそれを成り立たせ、活かせている「いのち」です。内部留保課税は、簡単にいうと法人というひとのいのちに課税するといっているに等しいのです。

負債は未来の己れの「いのち」を担保に借りている他者の「いのち」、自己資本(資本金+内部留保)は過去から引き継いできた己れ(法人)の「いのち」のことです。B/Sの右が「いのち」の表現だとわかれば、流石に国家権力といえども民主主義を標榜する限り、国民の「いのち」に課税するとはいえないのではないでしょうか。しからばどうする?

.純資産課税なら可能か?

 計算上左の資産から負債(他者のいのち)を差し引いたものを純資産と名付けています。この純資産なら課税することはできるのではないでしょうか。個人には相続税があります。これも所得税との二重課税という富裕層からの反発はありますが、一応定着しています。個々人は個の「いのち」に寿命があることによって、次代へ「いのち」をつないでいきますし、そこにイノベーションも起こります。資産も遺伝子情報と共に相続されるのは、相続されない側の個体の「いのち」の囁きとしてはいささか不公平でもあります。ところが法人という企業の「いのち」には定められた寿命がありません。そこで永遠の「いのち」として過去から未来へ内部留保が引き継がれていきます。

 個人の死に相続税があるように法人という人にも仮の寿命を定めて相続税を取るという案はいかがでしょう。B/Sの左の資産から負債(他者のいのち)を差し引いた純資産に課税をするのです。寿命はというと代表取締役社長の交代時を一区切りにします。在任一年当り0.2%とか10年以上は0.3%とか、任期のうち60才を超えた期間を0.3%とするのもいいかもしれません。取締役一人一年当りXX%なども考えられますね。

 荒唐無稽のようですが、相続税だってフランス革命以前には荒唐無稽、所得税の最高税率90%という時代もあったのですからあながちです。こんな話、所詮非富裕層へのリップサービスに違いありませんが、リップサービスにもある程度、論理的整合性が必要に思うのです。

.内部留保は株主のものか?

 近年株主資本主義が流布し定着しつつあります。総資本から負債を差し引いた自己資本を株主資本(株主のもの)と称するようになりました。B/Sの右を「いのち」自己資本は過去から引き継いだ法人というひとの「いのち」とわかれば、内部留保は株主のもの「過去の内部留保も配当しろ」という要求も無理筋だと分かるはずなのです。短期に株式市場で株券という”モノ”を売買し「“今ここ”の過去」しか関心のない株主に「“今ここ”の未来」という「いのちの活き」を云々する権利も資格もあるはずもないと思うのです。

.「色即空」

 図に記しましたが、複式簿記も右、左の二元論ではなく、「色即是空・空即是色」の循環論で思考すると企業のあり方も社会のあり方も少し違ってみえてくるのではないでしょうか。第三象限には従業員への配分である人件費もあるのですから。もちろん株主配当も法人税もこの第三象限の分配なのです。仕入先、下請け先もお客様さえもこの四象限のどこかで繋がっています。企業を取り巻く利害関係者のすべてが複式簿記的にも己れの右は他者の左、他者の左は己れの右と繋がっています。

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