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2019/03/10

「なぜチャート3.は『株主資本額』なのか?

       <図1.会社の二重性>
201903101.経営も「もの」と「こと」の間
BST講座の経営体験の場で壁に貼る、チャート3.自己資本額を「株主資本」に変えたとき、親しい縁者から「ブルータス、お前もか!」と詰られました。僕がステークフォルダ型思考からストックフォルダ型思思考に変節したのではないかと誤解されたのです。そうではなく、まったくその反対の理由です。結論を先に言うと、株式会社の存在は法律的には「所有と経営の分離」というのですが、果たしてその二元論で考えてよいのか、多発する企業の不祥事(合法的と称するものも含めて)も中小企業の後継者問題、株式の相続問題も、「所有と経営」を二元論として考えているところに起きているのではないか?「所有『即』経営」の絶対矛盾的自己同一(即非)、経営は「もの」と「こと」との間、「と」として捉える必要があるのではなかと思ったからなのです。

 

 20190223_21990年初頭にバブルが崩壊しました。日本の「所有と経営」を分離した株式会社も自己資本(企業の資本)と呼称して、企業間の株式持ち合い、取引金融機関の株式保有の仕組みを使って、日本的経営と称して、株主の権利を封殺して、企業ではなく、経営者の立場を守ってきたのです。それが,巨大バブルが発生した一因でもあります。
 
「所有と経営」の未分離の株式会社では「自己資本=株主≒経営者」となり経営者の「自己の資本」と同一視しています。株式は経営者の一族へと相続され継承されていきます。国家もそこで相続税を徴収するのです。
 
ところが自己資本の内の内部留保は誰が蓄積したものでしょうか?経営体験をすればたちどころに分かるのですが、企業を構成する関係者の汗と涙と智慧によって蓄積されたものです。従業員第一主義といって従業員を大事にしている、と熱く語る経営者もなんのためらいもなく自己資本といい、無意識のうちに「俺のもの」と思っているのです。

20190223_32.会社の二重性(ものとこと)

 経済学者にして哲学の人岩井克人さんは著書「経済学の宇宙」の中に「図1.会社の二重性」を掲げ、会社は「ひと」(法人)として資産を保有し、契約を結び、一方で「もの」(株式)として株主が所有する「ものとこと」の二重性をもった存在であると著しています。
 
株式会社の「自己」とは、主体性とは何なのでしょうか。以前にもご紹介した「図2.個と全体の絶対矛盾(企業)1-2」「図3.個と全体の絶対矛盾(企業)1-1」」に見るように①~⑧の利害関係者(ステークフォルダ)の関係性の重なったところに企業の「自己」と称する「いのちの活き」があり、その「主体性」を担っているのが経営者ということになるのではないでしょうか。
 
ストックフォルダ型だから株主資本なのではなく、ステークホルダ型だからこそ自己資本ではなく、株主資本と呼称したほうが「自己」という言葉の誤解による勘違いは少なくなるのではとの思いからチャート3.を株主資本額に変更した次第です。
3.内部留保は誰のものか?
 
所有と経営の未分離な名目株式会社も、たまたま「経営者≒株主」なのであって、決して己れや己れの親族の資本(資産)そのものではない、「経営に終わりはない」という視点から、そして「利益は未来費用」という視点から、企業の未来へ引き継いでいって欲しいと願うものです。従業員も内部留保の蓄積に貢献しているのですから。せめて従業員が大事だと思っている証しとして「株主資本」と呼称するのはいかがでしょうか。内部留保の年々の増分の一部を従業員持分として区分表示するのも一計かもしれません。
<追伸>
日産の今日的問題も、このステークフォルダ型思考から再度見直してみてはいかがでしょうか。カルロス・ゴーンさんの毀誉褒貶、善悪二元論、それ自体は些細な問題で、日産と三菱自が国家としてのフランスに持ち去られるか日本国に留まれるか否かの瀬戸際の大問題だと思うのです。もっとも20年前に日産自動車のいのちを見捨てたのは、日本の資本、拾ったのはフランスの資本ですから、フランス側に立てば、何をかいわんや、なのですが。 
 
さらにデサントと伊藤忠の争いも経営者が「株主資本」に対する意識の薄さが招いた今日的問題ではないでしょうか。三枚の図をよくよく見てください。「自己資本」と呼称するのは甘え、ステークホルダ型思考は「全体と個の絶対矛盾的自己同一」だからこそ「「株主資本」と呼称したほうがよいのではないかと思うのです。

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