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2020/03/21

<ポスト新型コロナウィルスの日本は、そして世界は?>

書  名「中国化する日本」-日中「文明の衝突」一千年史―
著  者 與那覇潤
出版社 文春文庫
初版 20144月10日(単行本初版2011年11月文藝春秋刊)
Photo_20200321132601 新型コロナウィルスのパンデミックでパニック下にある世界、とりわけ日本列島では東京五輪開催の去就もともなって、経済の先も見えない状況が続いています。その見えないという「先」は、目先の「先」、目先の切所は足元を用心深く一歩一歩歩いていく以外にないのでしょう。
  山を歩いていても、時に己れの未熟さゆえか、足元が震え、恐れおののく切所に遭遇します。しかし、その折も時に立ちどまって遠くを見、方向を確かめておかないと、気がついたら二進も三進もいかない進退窮まるところに身を置いてしまうことがあります。そんなわけで、ちょっと「ポスト・新型コロナ」の日本及び世界の様相を想像しておくのも一興かもしれません。
 1979年生まれという若い歴史(哲学)学者與那覇潤さんの「中国化する日本」論に耳を傾けてみるというのはいかがでしょう。タイトルが中国嫌いの方の心情を逆なでするかもしれませんが、決して中国に支配されるとか、宗主国がアメリカから中国に代わるという話ではありません。一度、嫌中観を脇において。
 人間社会の過去の復元力から想像しても、新型コロナのパンデミックを封じ込めるにはそれほど時間を要することはないのでしょう。しかし新型コロナ禍の原因は新自由主義による経済の世界化でもあり、それは又中国という国家が世界経済の主役級の一人として加わったことによるものでもあります。新型コロナウィルスが武漢発といわれることとも符合します。
 著者は「中国史を一か所で区切るなら唐(中世)と宋(近世)の間で切れる」と唱えた戦前の東洋史家内藤湖南の「宋代以降近世説」を視点にしています。紀元10世紀宋代に皇帝一人と官僚制による中央集権の専制国家の仕組みができあがり、貨幣経済が中国全土へ広がったと。そして以後中国の国家体制は現在の習近平政権まで、変わらぬ皇帝一人専制国家なのだ、と著しています。
 そのころ、日本では源平の政変で貨幣経済志向の平家が敗れ鎌倉武家政権が誕生しました。以来徳川幕府終焉まで12世紀から19世紀半ばまで封建制が続くことになりました。もし平家が勝っていたら、日本の近世は、明治維新を待つまでもなく天皇制専制国家がこのとき成立していたかもしれないと想像すると、「歴史のIF」は限りなく面白い。足利尊氏と争った後醍醐帝の目指していたものも、後鳥羽上皇の承久の変も、宋の政体を目指した政権構想だったのかもしれません。
 多くの日本人が信じて疑わない(己ももちろんその一人)、封建制と近世の切断面、明治維新を契機とする西欧化近代国家化へと歩んだ道は、同時に、象徴天皇制の専制独裁国家への道、中国化への道だった、そして、戦後の日本は再江戸化の道だった、と著者は語っています。「歴史は繰り返す形を変えて」、とすれば、この先の未来は。
 さて現在の安倍政権の国家運営の経緯を日々傍観していると、民主主義の終焉を想像させ、戦前への回帰を彷彿とさせるものがあります。専制独裁国家への道といえるのかもしれません。
 しかしこれは日本だけのことではなく、ロシアもプーチンによる独裁政権であり、現在のアメリカの二党政治も民主主義というにはほど遠いものがあります。新型コロナのパンデミックによる経済危機への対策として、各国の政府は今度ばかりは、供給(生産者)側だけでなく、需要(生活者)側へ直接現金を配ることをも考えているようです。それは、非正規雇用が定着し所得の不安定な格差社会へ移行しつつある日本の今こそ、低所得層の救済は喫緊の主題です。
 しかし仮にこの延長上にベーシックインカム政策が取り上げられるようになると、それはまさに日本国家の中国化、一党独裁専制国家の総仕上げになるのではないかと想像します。
 リーマンショックのとき、グリーンスパンFRB議長は議会証言で「100年に一度・・・・」と語ったと聞きかじっていました。あの時の議会証言は「We are in the midst of a once-in-a century credit tsunami」だったそうです。「credit tsunami」とあります。「バブル崩壊」ではなく、「津波」です。
 「100年に一度の津波の真っただ中」だったとすれば、未だ10年余、今回の経済対策として主要国政府の通貨大増発の分も加わって、第二波の大津波はさらに巨大なものになって押し寄せてくるのかもしれません。さてそのとき己はどうすればいいのでしょうか。既に老人ホームでブツブツぼやいているのでしょうか。「That is a question」(苦笑)

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