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2020/05/16

書名「情報の文明学」梅棹忠夫著<7日間ブックカバーチャレンジ第四日>

<7日間ブックカバーチャレンジ第四日>
書 名 「情報の文明学」
著 者 梅棹忠夫
出版社 中公文庫
初 版 1999年4月(初出1988年6月中公叢書)
2jpeg_20200516134401  我々世代では「知的生産の技術」の著者としても知られています。文庫化される11年前に中公叢書として出版されています。
 1963年に発表された論文「情報産業論」が世に出て以来センセーショナルな話題になり、様々に引用され続け四半世紀もの間、書籍化が待望され続けた稀有の論文です。1980年A・トフラーの「第三の波」が話題をさらった折も、すでにこの論文を知っている人たちは、「なんだ梅棹さんの二番煎じか?20年遅れの!」と思ったものでした。とはいえやはり、A・トフラーのものは西欧的な直線的時間観、進歩史観から抜け出てはいませんでした。
 1988年に書名の「情報の文明学」「情報の考現学」が加筆され一冊にまとまったといういわくつきの一冊、それからさらに32年が経ってしまいました。既に半世紀です。
 しかしいささかも古びていないのです。今、新型コロナパンデミックの現在を超えて、ポスト・コロナ社会に生きる価値観への進化(変態)の契機も隠されているかもしれません。
 日本人の多くが今でも脳みその隅に刷り込まれている、コーリン・クラークの第一次産業(農業社会)、第二次産業(工業社会)第三次産業(サービス・運輸・情報社会)という産業発展段階説。
 著者はこれが進歩史観(進化とは進歩である)であり、直線的時間観の表出だといいます。佐々木閑的にいえば、「神の視点の痕跡」ではないでしょうか。
 著者は生きもの進化(変態・展開)にたとえて内胚葉産業、中胚葉産業、外肺葉産業と著しています。
 内胚葉産業とは、ナ マコやミミズのように身体の真ん中を貫いた管になっている生きもの(人間も同じ)、農業の普及で胃袋や腸を満たすことができるようになった時代のことです。
 中胚葉産業とは生きものが骨格や筋肉を鍛え、陸上へ上がってきた時代、農業は遅れた産業ではなく、トラクター、コンバインと筋肉を強化して少人数で可能になった時代のこと、カロリーベースの自給率が死語になるはずの時代です。(農水省のお役人、自民党の政治家の頭は今もこの時代にとどまっています。)
 外胚葉産業とは皮膚・脳神経系の発達する時代、農業、工業が遅れていて、不要な時代ではなく、それらが情報化していく時代だというのです。すでに1963年にです。
 人間が生きものとして過去から現在へと進歩している存在ではなく、生命誕生以来微生物からウィルスまで”今ここ”の地球上に存在し、人間の身体の細胞の隅々まで”今ここ”の絶対現在に存在しているのと同じです。
 1969年にこう著しています。「現在、農業人口は20%をわっている。やがて工業人口も十数%台に落ちるだろう。理由はかんたんである。それでじゅうぶんささえられるからだ。そしてのこりの大部分は情報産業に吸収されることになる。おそらく二一世紀までには、日本もほぼこの水準に達するだろう。それは革命という名にふさわしい変化といえる。ただそれがバラ色の未来につながるかどうかは別問題である。たとえば、工業時代の前期にはいろんな社会悪が発生している。日本には「女工哀史」の例がある。あたらしい生産システムに人間が適合できなかったからだ。おなじことがニ一世紀の初期におこるかもしれない。それはかっての物質の暴威に対する情報の暴威ともいうべきものである。情報はうまくつかわれれば人類に革命的な力をあたえるにちがいない。だが、それは個人の幸福とは無関係である。わたしのいっているのは、歴史的な、一般理論であって、ユートピア思想ではないのだ。」と。
 ポスト・新型コロナの日本そして世界は、テレワークが進むともいわれています。ですが、5G、AI、ロボット、etc、個々の情報技術の進化の影響を微視的にとらえるのではなく、38億年の「いのちの活き」の不可逆的な流れ(展開)の方向を著者の造語、外肺葉の時代の進展ととらえて考えてみてはいかがでしょうか。
 大事なことは「バラ色の未来につながるかどうかは別問題」、そして終わりの一言「ユートピア思想ではない」というところ、未來はユートピアとは限らない、ディストピアかもしれないのです。
 晩年ご自身は「わたしは老荘の徒やから、ニヒリズムがある。自分は明るいペシミストや」と語っています。著者に倣ってポスト・コロナの日本列島を明るいペシミストで生き抜きたいですね。
【目的】
●読書文化の普及に貢献するためのチャレンジ
●参加方法は好きな本を1日1冊、7日間連続投稿する
【チャレンジのルール】
●本についての説明はナシで表紙画像だけアップ
●その都度1人のFB友達を招待し、このチャレンジへの参加をお願いする。

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