2009/11/03

今読む! 小野善康著「不況のメカニズム」

書名   「不況のメカニズム」 -ケインズの『一般理論』から新たな「不均衡動学」へ 
出版社  中公新書(1893) 
著者   小野善康
 赤い腰巻には「世界はなぜ『100年に1度』の絶望的不況に陥ったのか」と興味深いキャッチコピーが書かれています。
 日本では、1990年のバブル崩壊以後、国債残高は増加の勢いを増しGDPの二倍、まもなく1,000兆円に迫ろうとしています。いくら公共工事につぎ込んでも、金融機関の救済、円安誘導で輸出企業を後押ししても、企業の法人税を引下げ、所得税の累進を緩和し、相続税を引下げ富裕層(エネルギッシュな階層?)を優遇しても経済は回復するどころか、バブルの度に日本経済は活力を失ってきました。
 民主党は「コンクリートからひとへ!」のスローガンの下、母子加算の復活、子育て支援、高校教育の無償化等々「ひとへ」の策を積極的に打ち出しています。これを「社会主義政策だ!」「大きな政府への道だ!」「国民の自立心を奪う!」「怠け者を作る政策だ!といって反対する方が沢山おられます。
 一方「コンクリートから」の策としてダム、道路、空港建設など公共事業の見直しを進めています。これでは、停滞する未曾有の?経済危機は乗り越えられないと批判をします。
 ベルリンの壁が崩壊してにすでに20年、世界が資本主義化した今日、財政政策を自由主義か社会主義かといったイデオロギーの対立に持込むには無理があります。
 ケインジアンの著者は、ケインズの「雇用・利子および貨幣の一般理論」の章立てに沿って、この問題を経済学の素人にも分かりやすく丁寧に、純粋に財政政策として”コンクリート”(供給、生産、)サイドか?”ひと”(需要、個人)サイドか?どちらが効果が高いかを考えるときにきていると解き明かしています。
 構造改革によって生産サイドの自由度を拡大し、経済効率を高める政策がいいのか?今までのように公共事業を推進するほうがいいのか?それとも富裕層から貧困層へ所得の再分配することで需要を喚起したほうがいいのか?失業問題?、内需拡大?等々、今が旬の一冊です。

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2009/09/03

今読む!網野善彦著「『日本』とはなにか」

書名  「日本」とは何か 
著者名 網野善彦
出版社 講談社学術文庫
 2009年8月30日の総選挙で自民党が大敗北しました。賛成票を投じた選挙民も反対票を投じた選挙民も、そして投票所に足を運ばなかった30%の選挙民も、投票権を持たない若い方々も、すべての日本人は、好むと好まざるとに係わらず、意識していたか、していなかったか、期待通りの結果が得られても、得られなくても、この日、日本の国の有り様の大変革を受け入れる覚悟を固めたことを、記憶に留めて置かなければならないと思います。
 国の形を変えるということは、今後も経済成長優先でいくのか?輸出至上主義でいくのか?農業をどうするのか?地球環境保護のあり方?憲法9条はどうするのか?非核「三原則を守るのか、変えるのか?天皇制の有り様は?、様々な問題に答えを出していくことでもあります。

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2008/09/23

ナシーム・ニコラス・タレブ著「まぐれ」が面白い-人生における”まぐれ”の効用

書名 「まぐれ」
サブタイトル 投資家はなぜ、運と実力を勘違いするのか
著者 ナシーム・ニコラス・タレブ
出版社 ダイヤモンド社
 本を買う折は、たとえ購入書籍が決まっていても、可能な限り、アマゾンをクリックしないで、店頭に足を運ぶことにしています。タイトルやキャッチコピーから偶然出会う本、偶然手にした本を通しての著者との出会いが楽しいからです。この本もその偶然の一冊です。半年ほど未読、積読の中に埋もれていました。
 翻訳モノのさらに、面白いところは、読み終わってみても、日本語のタイトルやキャッチコピーでは、内容としっくりこない場合が多く、あらためて原題を見ると、語学音痴の僕にも原題のほうがピッタリと思う本も多いのです。しかしこの本のタイトルはまさにズバリです。さらにもっとズバリは、この本のサブタイトルにあります。サブタイトルの
「The HIdden Role of Chance in Life and The markets」がこの本の感想そのものです。
「人生やマーケットにおける『偶然』が持つ隠された役割」とでも訳せばいいのでしょうか。 邦訳のタイトルはこのサブタイトルの中の「Chance」をずばり”まぐれ”と翻訳したのでしょう。僕にはとても見事な翻訳に思えます。人生は自分の能力と努力をベースしながらも、それとは別の多くのChanceに彩られて進行していくもののようです。
 最近の若い方々はセレンディピティという言葉を好んで使います。前向きな明るい方が多いようです。しかし単に偶然出会ったあった出来事が、現在の自分にとって、都合のよいものであるとき、その出来事をセレンディビティと思っていいる方が多いように見受けます。
 老中の拙い経験では、セレンディビティとは、偶然の出来事を自分の人生にプラスになるように、生かす能力のことです。出来事そのものは偶然に過ぎません。
 僕自身も経営計画などの話の中で「因→縁→果」の話をしますが、「因果応報」と勘違いする方が多いのですが、「因果応報」とは似て非なるものです。
 若者に向かって「この世は因果応報」「努力が報われる社会」などと、のたまう無邪気な大人を見ると「お幸せに!」と皮肉を言いたくなります。努力は当然のこと、努力は幸せの必要条件です、十分条件ではないのです。努力が必ず報われるほど、人間の世の中はやわではありません。もしかすると、その大人は無邪気なのではなく、「カネで報われる」というメッセージを隠しているのかもしれません。
 人生の中での努力は、
「縁」といったり「運」といったりする、”偶然、””まぐれ”によって、報われたり、報われなかったりするのですから、努力のプロセスを大事にして、努力の成果だけで判断しないほうがいいのではないかと僕は思っています。

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2008/06/03

ひとの生と死を考える-梅原猛[編]「『脳死』と臓器移植」を読んで

<梅原猛編「『脳死』と臓器移植」-朝日文庫-を読んで>
 
後期高齢者医療制度が弱者切捨てとして問題になっています。打ち止めはパチンコの専売特許かと思っていましたが、昨年リハビ治療の診療報酬を180日限で打ち止めにする法案が可決されています。国民皆保険、介護保険が崩壊の危機にあり、日本の社会福祉制度は、弱者を切り捨てる政策で延命を図るという、おかしなことになっています。しかし我々庶民は法案が可決され、実施されてしばらくマスコミが騒いでいるうちは、一緒になって騒ぎますが、すぐに忘れてしまいます。
 政府は、けして忘れることなく着々と、一つひとつ手を打って、経済政策では経済成長なくして福祉無しと、構造改革という名の下に格差を拡大する政策を取り、福祉政策では弱者を切り捨てる政策を取っています。

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2008/04/22

日本の明日の姿? 堤未果著「ルポ貧困大陸アメリカ」岩波新書

 このところ書店の店頭に平積みになっている岩波新書があります。堤美香著「ルポ貧困大陸アメリカ」です。「きっと日本もこうなる」日本の近未来を垣間見ることができます。まだ手にしていない方には是非手にしてみて欲しい一冊です。
 著者は丹念にアメリカの貧困の現場情報を集め、淡々と貧困の有り様を語っています。そしてその貧困を作り出すアメリカの社会の仕組みを解き明かしています。読者はきっとこの本の中に明日の日本の姿が重なって見えるに違いありません。この本は日本の近未来へのタイムマシンです。

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2008/01/14

お奨め書籍「三位一体モデル」中沢新一著

書名 「三位一体モデル-TRINITY-」
著者 中沢新一
出版社  (株)東京糸井重里事務所

昨年一月に出版されベストセラーになった本です。腰巻に「30分で読めちゃう」とタモリの書評があります。僕には30分というわけにはいきませんでしたが、まあとりあえず60分かければ読み終えることができます。「三位一体」という思考モデルの提示ですから、日常のビジネスシーンにも、プライベートな生活上のことにも、役に立つ思考モデルです。座右に置きたい一冊です。
 古くは児雷也に登場する、「蝦蟇-蛞蝓ー大蛇」の三すくみ構造、「グー、チョキ、パー」のじゃんけんモデル、「真-善ー美」「心-技-体」等々そして、諸葛孔明が劉備に提言した、「魏-呉-蜀」の天下三分の計に見られる三国鼎立の安定構造も、三位一体モデルと想像できれば応用が利きますね。

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2007/05/29

岩井克人著「貨幣論」を読む(4)第二の敗戦記念日

<第二の敗戦記念日>
1985年9月22日ニューヨークプラザホテルで開かれた、米、英、独、仏、日の蔵相会議G5で、新たな米ドル救済策として為替の米ドル安誘導を合意しました。いわゆるプラザ合意です。米ドル・円レートはその年の内に240円から200円台へ、二年の後には、160円台へと円は高騰していきました。第二の敗戦記念日は9月22日になりました。
 輸出立国という過去の成功の呪縛から抜けることができない政府は、ここで内需拡大を旗印に、公共工事を中心に財政出動し、日銀は低金利政策と、資金供給を緩めバブルへの道を開いたのです。

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2007/05/18

岩井克人著「貨幣論」を読む(3)「モノの側からの反乱」

<オイルショックはモノの側からの反乱>
 1973年10月第四次中東戦争を契機に原油価格の高騰が起こり、1バーレル3ドルから12ドルへと跳ね上がりました。最近の若者にとっては、昔話のような出来事ですが、原油の高騰は、玉突きのようにあらゆるモノの価格を押し上げていきました。日本ではトイレットペーパーや家庭の洗濯用洗剤が店頭から姿を消し、パニック状態になったのです。当時僕は、日本の工業力を信頼していたので、「洗剤がなくなるはずはない、買い溜めをするな」と新婚早々の家内を困らせたものでした。買い溜めをさせなかったために、一年ほど続いた品がすれの最後の二週間、我が家は洗濯に困って、固形の化粧石鹸を溶かして凌いでいました。信頼していた通り、その後品物はどっと店頭に溢れ出しました。
 販売側の売り惜しみも相当あったようです。悪徳商売と囃すひとも多かったのですが、商品を仕入れる度に価格が高騰して、単価表の書き換えが間に合わなくなる状況では、ぼやぼやしていると、先月売った価格より次には高値で仕入れる羽目になってしまうのですから、売り控えも無理からぬことだったのです。

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2007/05/13

岩井克人著「貨幣論」を読む(2)「日本への奇襲攻撃」

<日本への奇襲攻撃「リメンバー・パールハーバー」>
 アメリカは1971年8月15日突如ドルと金との交換を停止しました。それまでは米ドルは一定の割合で金との交換を保証していました。長年貿易赤字と財政赤字のいわゆる双子の赤字で米ドルを世界に垂れ流し(供給?)してきたアメリカは、金の流出を恐れ、兌換を停止したのです。世に言うニクソンショックです。8月15日という日付をみても日本を狙い撃ちした事件であることはいうまでもありません。同時に一ドル360円に固定されていたドル円レートは変動相場制に移行し、一気に300円台に突入しました。

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2007/05/12

岩井克人著「貨幣論」を読む(1)「純粋紙切れは信頼が命」

書名  貨幣論
著者  岩井克人
出版社 ちくま文芸文庫
 アメリカの貿易赤字と財政赤字、いわゆる双子の赤字は1960年代から恒常的に的に続いてきました。いつアメリカ発の大恐慌が再来するのか、経済雑誌は折に触れて特集を組んできました。その危機をアメリカはニクソンショックとプラザ合意と、二回大きな手を打って、巧みに回避してきました。そのたびにドル安という徳政令で、日本は対アメリカの米ドル資産を棒引きにされてきたのです。 そして今も双子の赤字は続いています。

どうしてアメリカは破綻しないのでしょうか?
なぜ純粋な紙切れで無価値のはずの米ドルを世界中の人々が受け取るのでしょうか?
アメリカは破綻しないのか?破綻するとすれば、何時、その時世界経済はどんな様相を呈するのでしょうか?
 長年の僕の疑問に終止符を打ってくれたのがこの本です。

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